2008-12-01から1ヶ月間の記事一覧

島尾伸三『季節風』を読む3

『季節風』に収録された全117枚の写真には通常のクレジット*1とは異なって、撮影場所に関する簡潔な記述と不思議なフレーズ(日英併記)が添えられている。不思議な、というのはその117個のフレーズは、すべて繋げると一篇の詩になるように思われるからであ…

鉄塔

窓のない家、は想像できるが、家のない窓、を想像するのは難しい。

2004年5月18日撮影。「おお、決まってる。」 ポスターを見かけるたびに、書体ばかりに目が行った。 2004年6月4日撮影。「誰?」 しょっちゅう迷子になっていた。そして迷い込んだ先には思わぬ出会いが待っていた。誰もいないギャラリーの写真展 "Who Tells T…

偶然

アンテナ 藻岩山 ツララと親子 あら、まあ。何科?

島尾伸三『季節風』を読む2:生まれたばかりの薄暗い世界

島尾伸三は写真のクレジットに決して撮影年月日を記さない。一貫している。写真にそんな「情報」は必要ないと言わんばかりに。少なくとも彼が撮りたい写真は「情報」でもないし、「映像」でさえない、ようである(『季節風』96頁)。 熱帯植物公園 シンガポ…

レースのカーテンが

一見ありふれたビジネスホテルの窓からの眺めに、レースのカーテンの格子模様と襞が、まるで目的=対象物と私との間を永遠に隔て続ける時間と距離の形象のように見えてきた。「博多駅前のビジネスホテルからの眺め」だという。 博多駅前のビジネスホテルから…

青い傷

一見ありふれた浦の風景に異様な青い傷のようなものが浮き上がる。その写真からは、そこだけ別物のようにペンキの青が生々しくまるでこちらの世界に飛び出しているような強い印象を受けた。そこだけペンキ塗り立てのように不自然だ。何だろう? 写真には次の…

ケヤキの音楽

寒気の少し緩んだ午後、猫と雪だるまを探しながら、久しぶりに「原生林」まで歩いた。裸になったケヤキ(欅, Zelkova tree, Zelkova serrata)の繊細で柔らかい枝振りに見惚れる。ケヤキの音楽を聴く気分だ。風太郎の体力がすっかり落ちたせいで、この夏以来…

最良の時、静寂がきこえる

音楽という希望? 天国にいるベートーヴェンに感謝の手紙を書く若い魂があり(http://d.hatena.ne.jp/kaiowada/20081221/1229871872)、究極の「音楽」を切望する若い魂がある(http://d.hatena.ne.jp/alsografico/20081221/p1)。そして、途方もなく激しく…

すれ違い

寒い。昨日より一段と冷え込む。新しい雪がうっすらと積もっている。風太郎やや不調。おお、雲がいい感じ。空き地の雪の上に鉄柵から落ちた雫の跡がきれいに並んでいる。そういえば、昨日、マミちゃんを名乗る人物から変なメッセージが入った。マミちゃん? …

二匹の犬を連れた奥さん

2004年9月17日撮影。彼女はいつも笑顔だった。

永井荷風の玉の井畧図

先日東向島を中心に一緒に歩いたid:mmpoloさんから頂いた地図と永井荷風が描いた玉の井の地図とを見比べながら、私はあのとき、変な言い方だが、70年という時間を全身を目にして歩いていた、すなわち、約70年の歳月の経過に、色んな意味で驚きながら、歩いて…

サトイモ・オンパレードの日

スーパーの野菜売り場の一角に各地から届いた各種サトイモ(里芋, taro, Colocasia esculenta)がどこか誇らしげに並んでいた。見ているだけで幸せな気分になった。 静岡産の海老芋、宮崎産の京芋、香川産の金時人参 千葉産の八頭(ヤツガシラ) 福井産の大…

昨日は冬至だった

昨日から冷え込んでやっと雪になった。やっと。雪のない冬は心も体も空回りして落ち着かない。まだ雪だるまを作れるほどは積もっていない。猫の足跡を見かける。とうもろこし畑の倉庫の屋根にうっすらと積もった雪。歩道で雪にまみれた小さなイチョウの落ち…

横浜郷愁3

横浜で実際にはじめて会った小野さんと話し込んだ中華街のお店でもらったライター。こういう小物がいい思い出の品になることが多い。このライターを見るたびに、小野さんのあったかい人柄、懐の深さを思い出す。とても謙虚な人だった。小野さんは「福満園」…

扉の楽譜。Kyrie, eleison.

季節風―照片雑文 (照片雑文 (〔1〕)) 島尾伸三『季節風 照片雑文★☆』(みすず書房、1995年)を手に取って、見返しを捲り、そして扉を捲ったとき、小さな楽譜が目に飛び込んできた。楽譜が読めない貧しい目と耳にも、美しい曲のように感じられた。ミサ曲だろ…

島尾伸三『季節風』を読む1

島尾伸三『季節風』(asin:4622044064)を読んで、「狂気」という言葉を他人事のように安易に使ってはいけないことを肝に銘じた。母親の狂気とそれを庇護した父親の優しすぎる愛の下で、幼い兄妹は命を蝕まれていった。妹を救ってやれなかった兄はその後、狂…

信仰との距離

島尾伸三は家族四人で数年過ごした茅ヶ崎の「東海岸」を20年ぶりに訪れたとき、自然と足が茅ヶ崎カトリック教会に向いたという。そこで彼は奄美大島の名瀬マリア教会での母親の振舞いなども想起しながら、特に父親が大切にしていた信仰と己の「無神論的な現…

横浜郷愁2

id:CUSCUSさん撮影。「来年は坂ちゃん(id:keitabando)の招待で、ブエノスアイレスの場末の酒場でタンゴ踊りましょうね。」 id:segawabikiさん撮影。「このほら吹き爺はさあ!」(id:simpleA) 「お前もほら吹き坊主だよな」(id:taknakayama) segawabiki…

横浜郷愁

id:paseyo作「とびだす絵本」とid:alsografico作「きのこ」(楓製)。蝶とキノコが『濹東綺譚』の上で出会う。お二人とのきのこ談義が楽しかった。

爺っぽい買い物

久しぶりに路地階段を通って買い物に行く。途中、電柱の落書きが目にとまる。正体不明の動物の顔が描かれていた。犬か、トナカイか、はたまた恐竜か、判然としない。愛嬌のある目の描き方に遊び心を感じた。買い物は軍手とめざし(千葉産)と酒。偶然とはい…

盲目の父と男の子

ジュンク堂書店北側向かいのガラス建築。 昨日はジュンク堂書店のプレオープンに足を運び、島尾伸三の本を三冊購入した。『東京〜奄美 損なわれた時を求めて』(asin:4309016197)のほかに、『季節風』(asin:4622044064)と『中華幻紀』。札幌のジュンク堂…

氷雨

みぞれ(霙, sleet)が冷たい雨に変わった。 新聞配達ご苦労様 ふりむいて 太陽の位置を確認する 数週間前にはあそこの畑に突き刺さっていた あ、まだ灯りが ナナカマド(七竃)の雫に藻岩山を映そうとして 薔薇の実はまだあるかな あった 溝の深いスダッド…

「なぜ兵士になりたいのか」

とうに知っている歌でも すでに持っている歌でも どんな歌でも 好きなひとから貰えると その歌は特別な歌になる つながる歌となって自分に響く クリスマスの歌を歌いたい自分の好きなクリスマスの歌ひとつ 走るそよ風たちへ - 堀川麗美 (君はやさしい海から…

悲惨。損なわれた時を求める島尾伸三

大好きな写真家の島尾伸三が島尾敏雄と島尾ミホの長男であることを知ったのはいつだったろうか。そのとき、彼の写真や文章に惹かれる理由が分かったような気がしたことをぼんやりと覚えている。ずいぶんと曖昧な書き方だ。大好きと言うわりには、手元にはボ…

ムクドリの大群

雪のない大通公園にて。突然車の騒音をかき消すほどの大音量の野生の声が天から降ってきた。何だ? 何だ? あっちからもこっちからも小型の野鳥が編隊を組んで飛来した。すごい。ムクドリ(椋鳥, White-cheeked Starling, Sturnus cineraceus)だ。大合唱の…

今いる場所に言葉を届けようとして

今いる場所に言葉が届かない。届けようとしてもがく。言葉の海が時化る。決して届かないことに気づかされたとき、届かないままに言葉の海が凪ぐのを待つと、馴染んでいたはずの言葉たちが見知らぬ姿を現わし始めることがある。そんな時、詩の言葉の傍にいる…

対象年齢6歳以上

横浜で会った小野さん(id:sap0220)からお土産としていただいた大分限定の「関さばキューピー」(左)と「どんこキューピー」(右)は今、私の部屋で楽しそうに宙を漂っている。世間ではこういうのも遊び心というのかもしれないが、遊び心は常に危険と隣り…

家の壁を叩くのは誰だ?

コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン、 コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン、 ……家の外壁を規則正しく叩く奴がいる。かなり大きな音が家の中に響く。誰だ? 二階の窓から身を乗り出して音がす…