2009-04-01から1ヶ月間の記事一覧

まるで墓のような揺籃のような

遠くからでも思わず目をみはる不思議な姿をした桜の樹がある。かつての大樹の姿を想像させる直径70〜80センチの太い主幹は途中で切断され朽ちている。それはまるで内蔵や骨が剥き出しになったかのような無惨な姿を晒している。そこから曲がった腕のように伸…

グールドの鳥打ち帽:坂本龍一のグリーンランド旅日記(travel itinerary)から

昨年、グレン・グールドのコンピレーション盤をつくる機会があって、70枚あるんだけど、彼の録音を全部聴き直した。同時にグールドの本を読んだりもした。グールド自身は北極圏へは行っていないんだけど、彼は、北にあこがれ、北をめざしていた人だった。行…

「絵引き」の発想、念仏を栖(すみか)とす

非常に優れた自伝である宮本常一の『民俗学の旅』の最終章は「若い人たち・未来」と題されている。基本的には、「可能性の限界をためしてみるような生き方」(194頁)、「生きるということはどういうことか、また自分にはどれほどのことができるのか、それを…

なぜ苦しみながらも愛するのか

懐かしい曲。 乾いた道をころがる太陽 うちすてられた望郷の思い 時の狭間をさまよう情熱 空を映した瞳の色 …… あなたを 失ってなお 追い求める 夢の果てまで はるかな旅へと ……more こんな日本語の歌詞(大貫妙子作詞)と …… なぜ苦しみながらも愛するのか …

札幌、晴、微風

独り言相手を求めて、ハナに会いに行く。あまり相手になってくれなかった。 ツツジ(躑躅, Azalea, Rhododendron)が札幌軟石の塀に影を落とす。 Yさんちの珍しい鉢植えの雪割草(Mealy primrose/Liver leaf, Hepatica nobilis var. japonica)が満開だった…

バイオマスのコップからコンサートの背景へ

バイオマスのコップ楽屋のテーブルの上には3本のソフトドリンクのペットボトルとプラスチックのコップが用意されていた。スタッフの一人からそのコップを手渡されたときに、「あれ?」と思った。よくあるプラスチックの硬質の冷たい手触りとはまるで違って…

いい感じの雲だなあ。水と風の音楽のようだ。

クルミスマイルからモア・スマイルへ

新しい名刺「moreSmile」が完成する。イラストは著名なid:hayakarさん。 去年の秋、自分が住んでいる町から世界に向けて幸せの波動を送るクルミスマイル・プロジェクトをひとりで勝手に立ち上げて楽しんでいたとき、それを見た茨城で漆工芸の道に励む菅原さ…

SHIBAURA耕運機(Rotary tiller )

こんなところでどうした? チオノドクサ(Glory of the snow, Chionodoxa luciliae)。 今までタンポポ(西洋蒲公英, dandelion, Taraxacum officinale)の花を見過ごしていた。 ハクモクレン(白木蓮, Yulan magnolia, Magnolia heptapeta[denudata])の蕾…

坂本龍一を聴く@札幌キタラ

小川のせせらぎに虫の声が重なる静寂の暗闇のなかで、まるで外科医のように坂本龍一はいきなりピアノの内蔵に両手を差し入れ、非常に繊細な手つきで直にピアノ線に触れながら、ピアノの産声のような瑞々しい音を響かせた。「宇宙の音みたい」と隣の人はつぶ…

嗚呼、カタクリよ

スプリング・エフェメラルのなかで一番惹かれるカタクリ(Katakuri, Dogtooth violet, Erythronium japonicum)。今年も会えた。思わず、愛撫するように撮影していた。 Mさんちの庭でもツツジ(躑躅, Azalea, Rhododendron)の花が咲いた。 道端にしゃがみ…

メメント・モリ、新生

メメント・モリ(Memento mori)は、ラテン語で「自分が(いつか)必ず死ぬことを忘れるな」という意味の警句である。日本語では「死を想え」「死を忘れるな」などと訳されることが普通。芸術作品のモチーフとして広く使われ、「自分が死すべきものである」…

アモシュトリに倣いて

今日は古代アステカの「アモシュトリ」amoxtoli と呼ばれていた一種の折り本を想像しながら、3冊のアコーディオン型の本を作った。出来上がりはメビウスの帯を彷彿とさせる、表と裏がつながった循環する本になった。 10年以上前のダンボール紙を使ったヘン…

クレヨン

押し入れを整理していたら、娘たちが幼い頃使っていたクレヨンが出てきた。捨てられない。

嗚呼、白樺よ

今朝はシラカバ(白樺, Japanese White Birch, Betula platyphylla var. japonica)をハグした。 オニグルミ(鬼胡桃, Japanese Walnut, Juglans mandshurica subsp. sieboldiana)の新芽。 トチノキ(栃の木, Japanese horse chestnut, Aesculus turbinata…

札幌、朝、小雪

大学から西の方角を望む。手前は藻岩山(531m)。左手奥は神威岳(983m)、烏帽子岳(1109.7m)、百松沢山(1038.1m)など。右手奥は手稲山(1023.1m)。 南西の方角。札幌岳(1293.3m)、狭薄山(1296.1m)、空沼岳(1251.0m)など。

論理的表現の領域

論理学概論受講生のみなさん、こんばんは。元気ですか?私は元気です。前回はオリエンテーションということで、この講義の概要、雰囲気、そして講義以前の「大学生やっていることの深ーい意味」についてお話ししました。覚えていますか。そう、大学に入った…

札幌、雨

ルピナス(昇藤, Lupine, Lupinus polyphyllus)の葉 ムスカリ(Grape hyacinth, Muscari armeniacum) 黒猫 キレンジャク(黄連雀, Bohemian Waxwing, Bombycilla garrulus)の群

平等な自然

宮本常一は、肺結核を患いわずか九ヶ月間しか勤めることのできなかった最初の小学校の教員時代(1929年、昭和4年、22歳当時)を振り返ってこう書いた。 専攻科*1を出ると泉南郡の田尻小学校へ勤めることになった。そこには教員住宅があってそこへはいること…

草木たちの告げる「暦」

藻岩神社境内で桜の木の下に立つ。花はまだ先。 チオノドクサ(Glory of the snow, Chionodoxa luciliae)という名前を初めて知った場所に今年も咲いた花には愛着が湧く。 ヒマラヤユキノシタ(ベルゲニア, Bergenia, Bergenia stracheyi)があちらこちらで…

噂が伝説になる時

宮本常一は若い頃に肺結核で二度死線を彷徨った体験をもち、生存にぎりぎりの肺活量しかなかったと言われるも、日本列島の津々浦々を何かに憑かれたようにひたすら歩き続けた稀有な旅人、前代未聞の記録者だった。1930(昭和5)年、23歳の時、最初の病に倒…

その後のキノコたち

昨年暮れに横浜で菅原さん(id:alsografico)から譲り受けたキノコたちは今も机上で目に見えない生長を続けている。自己紹介: タモ(Ash, Fraxinus mandshurica var. japonica) ブナ(椈・山毛欅, Japanease beech, Fagus crenata) スギ(杉・椙, Japanes…

生きている人の寺:生活保護へのベースキャンプ

「生きている人の寺」(朝日新聞2009年4月14日夕刊) 新聞の小さなコラムが目にとまった。社会の底が抜けて、生存権さえ奪われた人々が増える中、最低限の衣食住を無償で提供し、「生活保護へのベースキャンプ」になっている寺があるという。在家の僧侶の真…

木を植える音楽家、坂本龍一

現在国内ツアー中の坂本龍一が北海道にもやって来る。音楽が目に見えない心の土壌を耕し、そこに目に見えない木を植え、目に見えない森を作ることもできる技芸だとすれば、実際の植樹は目に見える地球規模の「音楽」と言えるのかもしれない。坂本龍一は4月19…

雪割草

原生林では朝陽を浴びて樹々の新芽が金色に輝き、住宅街の目立たない場所で今年も雪割草(Mealy primrose/Liver leaf, Hepatica nobilis var. japonica)が花開いた。

「声」の歴史の断絶

宮本常一は九州への旅(昭和15年、33歳)の回想の中で明治維新を境目とする日本人の「声」の歴史の深い断絶に触れている。大変興味深い。 私が年寄りたちからいろいろの話を聞くようになったとき、明治維新以前のことを知っている人たちとそうでない人たちの…

ボケ、キタコブシ、そして、めんこいねえのおばあさん

ユーモラスな形のボケ(木瓜, Flowering Quince, Chaenomeles speciosa)の新芽。 キタコブシ(北辛夷, Magnolia kobus var. borealis)。仲間のハクモクレンよりも可憐で繊細な印象の花をつける。今朝、念願の「めんこいねえのおばあさん」(「最近気がかり…

枯死芸:悼むアート

途切れながらもまだ続けている他愛の無い私なりの自然芸術活動がある。家族からは気持ち悪いから止めてと言われ続けて、もう二年あまり。何のことはない。散歩で拾い集めた枯れた草木のパーツ(枝、蔓、落ち葉、樹皮、果実、果皮など)から一種の祭壇めいた…

書物の翳を愛でる同志として…

東京外国語大学出版会 書物に対していい加減な態度を取り続けてきた私のような人間にはもったいない粋なメッセージとともに一冊の本が届いた。 書物の翳を愛でる同志として… R 俺、書物の翳、愛でてたかな? そう言われると、そういう気がしないでもないが…

現代のアモシュトリ

今福龍太著『身体としての書物』にいろいろとインスパイアーされながら、結局のところ、と思い至ったのは、書物とは人生を最も深いところで導く「暦」のようなものではないかということだった。書物の消息を追うなかで、今福さんにとってもっとも重要な霊感…