碁会所のオーナー、池田さん

小坂さん(左)と池田さん(右) 町内のご意見番、小坂さんの紹介で藻岩碁会所のオーナーの池田さんに会った。実は数日前に、小坂さんから、池田さんが本を処分したがっているからもらってやってくれないかと頼まれたのだった。池田さんは亡くなったご主人の…

9月と10月のあなたたちとわたし

ありがとう。

旅の話

礼文島から流れて来た中野のおばあさんは私に写真を撮られることを未だに警戒している。その日の朝も中野さんはいつものようにサフラン公園の奥の東屋で一服していた。私はナナカマドの紅葉やイチョウの黄葉を撮りながら、東屋に近づいて行った。私に気づい…

赤い鬼灯を言葉の代わりに

来た道をふと振り返ると、四、五十メートル後ろから見覚えのあるカップルがこちらに向かって歩いてくるのが見えた。K夫妻だ。踵を返して来た道を戻り始めると、私に気づいた夫人が笑顔で手を振ってよこした。私も手を振り返した。やや俯き加減のご主人の表…

ドキュメンタリー以前

ジョナス・メカスの日記に、ジェフ・パーキンスと一緒にオーグスト・ヴァルカリスの仕事場を訪れたセバスチャン・メカスの「ビデオ・ポストカード」がアップされた。 A visit to the studio of Auguste Varkalis, with Jeff Perkins エレベーターのない古い…

トリカブトを生けるおばあさんに倣って

エゾトリカブト(蝦夷鳥兜, Monkshood, Aconitum yesoense Nakai) ダチュラ(朝鮮朝顔)やトリカブトには独特の美しさがあると常々感じてきた。一昨日の朝、数年前の記憶をたよりにして、ある空地を訪ねた。ああ、まだ咲いていた。夢中になってシャッターを…

愛すべきベレー帽のおじさん

そのおじさんの名前はまだ知らない。満足に言葉を交わしたこともない。年の頃は六十。毎朝よれよれのベレー帽をかぶり、ピンク系のよれよれのシャツを着て、大きなよれよれのリュックを背負い、昔風の太く長い水筒を肩にかけ、書類っぽい紙の束が大量に入っ…

風が涼しいねえ、と彼女は何度も言った

イチョウ(銀杏, Ginkgo, Ginkgo biloba L.) サフラン公園の奥まったところにある東屋の近くに三本のイチョウの木があり、そのうちの一本に実がなっている。一番低いところになっている実でも2メートルくらいの高さにある。それを見上げてああでもないこう…

上海からの便り

胡さん、範さん、上海に帰る(2010年08月18日) 私の演習に半年間通って、先月上海に帰った範(Fan)さんから便りがあった。上海はまだ「ちょっと暑すぎ」だという。毎日私のブログを見て、「いろいろな花の名前を学んでいます(笑)」と書いてあった。でき…

佐々木翁との会話

しゃがみ込んでカシワバアジサイ(柏葉紫陽花)をああでもないこうでもないと撮っていた。気がついたら我を忘れて息を止めて一、二分の間に数十回シャッターを押している。だめだ、まだよく撮れない。どんな草木の撮影も近頃はその繰り返しだ。我に返って深…

赤いペチュニア

二人はまるで別世界から忽然と私の前に現われて、そしてまたそこに消えて行くかのようだ。今朝もまた二人を見かけた。三度目だ。サフラン公園の東屋の日陰で二人は静かに休んでいた。買い物帰りのようだった。私は異常な暑さを話題にしたが、二人にはそれほ…

小森さん、語る

珍しく帽子を被らず、顔も青白い小森さん。風邪をこじらせてしばらく寝込んでいたという。今日になってようやく外にも出られるくらいに回復した。たかが風邪だが死ぬかもしれないと思ったほどだったという。まあ、この歳だからな、いつあっちに行ってもおか…

伝えられないこと

明るい陽射しの中を二人はぴったりと寄り添って歩いてきた。奥さんはご主人の腕につかまっていた。奥さんには脳梗塞の軽い後遺症がある。ご主人は小柄な奥さんの傘になっているように見えた。K夫妻は私に気づくと深々と頭を下げた。「先日は写真をどうもあ…

空白の重み

昨日の朝は小雨模様だったので、透明傘をさして散歩に出た。帰り道の途中にあるサフラン公園の東屋でひと休みしていると、礼文島出身の中野さん(女性)がやってきた。先日話した利尻島出身の中野さん(男性)とは直接の縁はない。二人は知り合いだが、それ…

女の世間(Women's Society)と男の孤立(Men's Isolation)の間

ある集まりを終えて楽しそうに語らいながら家路につくご婦人たち。宮本常一の言葉を思い出す。 女はまた、共同体の中で大きな紐帯(じゅうたい)をなしていたが、それは共同体の一員であるまえに女としての世間を持ち、そこではなしあい助け合っていた。(宮…

「ギンナンがもう落ちている」と中野さんは言った

イチョウ(銀杏, Ginkgo, Ginkgo biloba L.) サフラン公園入口そばの東屋に中野さんがポツンと一人で座っていた。今朝は簡易枕も持参せず、横になってはいなかった。隣に座って少し話した。ぶり返した蒸し暑さのせいだろうか、顔に疲労の色が濃い。言葉も少…

塚本さんからモロッコいんげん等をいただく

散歩の往きで塚本さんに呼び止められた。通りかかるのを待っていたのよ、モロッコがたくさん生ったから持って行きなさいという。モロッコですか? そう、モロッコいんげん、ササギともいうかしら。ああ、ササギのことですか。恐縮したが、ありがたくいただく…

中野さん、語る

サフラン公園の東屋で横になって涼んでいる人がいた。簡易枕持参だ。さすが、やっぱり、中野さんだった。私の敬愛する町内の世話役の一人。その行動力、活動範囲は傑出している。老人から子供まで、町内で中野さんの顔を知らない人はおそらくいない。東北訛…

カラス余話

ひと月以上も佐々木さんに会わなかった。腰の調子が悪いのかなあ、まさかなあ、などとちょっと心配していたが、先日苅谷さんから佐々木さんはカラスを避けて原生林に面した道は歩かないようにしているようだと聞いてひと安心していた。その苅谷さんは三つ目…

栃の木、大姥百合、擬宝珠、桔梗

未詳 街路樹のトチノキ(栃の木, Japanese horse chestnut, Aesculus turbinata)。今年はちょっと弱っている。 コスモス(秋桜, Cosmos, Cosmos bipinnatus) 原生林のオオウバユリ(大姥百合, Giant lily, Cardiocrinum cordatum var.glehnii.)が咲きはじ…

三世代の女たち

朝の歩道を年配の三人の女性が横に並んでこちらに向かってゆっくりゆっくり歩いてくるのが見えた。向かって右側、車道側を歩いているのは背の高い比較的若い女性だった。左側の二人は老女に見えた。若い女性が二人の老女を庇護しているように見えた。その三…

サンパウロからminha Vidaが届く

Akinori Kajisako, minha Vida (K&S, 2005) 中国から戻った直後にサンパウロの楮佐古さんから待望の写真集が届いた。「アパートからみた夜明け」の写真が一枚添えられていた。中国に発つ少し前に注文してあった。ブラジルの郵便事情からみて3週間はかかるだ…

塚本さんから大根菜と廿日大根をいただく

大根菜を収穫する塚本さん ハツカダイコン(廿日大根, Radish, Raphanus sativus var. sativus) 一週間ぶりに散歩する町内の自然の景色はがらりと変っていた。中国に発つ前にはまだ裸の枝を晒していた木々も新緑に覆われていた。道端や空地ではマーガレット…

菱さんとの会話

無防備なことに、写真を撮ろうとして道端でしゃがみ込んだり、木や空を見上げていることが多いせいか、何かいるんですか? とか、何か撮れまして? などと背後からよく声をかけられる。場所が場所なら、とっくに命を落としているだろう。昨日はあるお婆さん…

ページへの深い眼差し

工藤さんが大変稀少な『日本の近代活字 本木昌造とその周辺』(近代印刷活字文化保存会、2003年)を不要だからと言って私に譲って下さった。昼休みにわざわざ届けて下さった。なんと工藤さんはかつて印刷業界で働いていらしたという。その関係で手に入れられ…

弔問

塚本さん。2009年11月7日撮影。 私が散歩で出会った友の一人、塚本重信さんは2010年3月24日、享年76歳にて生涯を終えた。もう一人の友である佐々木さんから塚本さんの死を知らされたのは4月23日だった。 別れ。塚本さんを偲ぶ(2010年04月23日) 一昨日の散…

サフラン公園の桜

今朝は陽射しは暖かかっただ風が冷たく、爽やかだった。だいぶ前を行く佐々木さんがひょいと振り返ると私に気づき手を振ってくれた。私も手を振り返した。佐々木さんは私が追いつくまで立ち止まって待っていてくれた。もう一時間は歩いているという。毎日二…

うららかな春日

セイヨウタンポポ(西洋蒲公英, Dandelion, Taraxacum officinale) 昨日から気温が上がりはじめ、今日は朝からぽかぽかの陽気。ようやく春らしくなった。Tシャツ一枚でも散歩できそうなくらい暖かかった。そういえば、実際Tシャツ一枚でインラインスケー…

城塞と砲門、工藤さんとの会話

今朝、霙まじりの雨風の中、校舎から少し離れた所にある駐車場から校舎に向かう途中で警備員の工藤さんと出会い、歩きながら、宮本常一やソローの話をした。工藤さんはソローが『コンコード川とメリマック川の一週間』の中で語った「ジョウサイとホウモン」…

ジャスミンの香り立つ美しい夕べ

昨夕開催された新入留学生歓迎会のために、私のゼミ生である上海からの留学生、胡さん、范さんを通じて親友の梁さんに二胡の演奏を依頼してあった。大勢の留学生が歓談するややノイジーな舞台空間で、梁さんは歓迎の夕べにふさわしい二曲を披露してくれた。…