歴史

留魂之碑:大田静男さんの「希望」

本橋成一監督のドキュメンタリー映画『ナミイと唄えば』(姜信子原作・企画、2006年、asin:B000LV6MLO)の後半、姜信子さんとナミイおばあが、大田静男さんの自宅を訪ねるところからはじまる場面がある。大田静男さんは自宅の野趣あふれるいい感じの庭のよう…

時代を超えた時

asin:4062748150 石牟礼道子『苦海浄土』は、湯堂湾と湯堂部落の自然と人事が深く織り成した美しい情景の見事な描写から始まる。その中の「村のよわい」という一見何気ない表現に惹き付けられた。壊れやすく、壊れても気づかれにくい人の心の奥底の時の熟成…

絶対的な他者

琵琶法師―“異界”を語る人びと (岩波新書)作者: 兵藤裕己出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2009/04/21メディア: 新書購入: 4人 クリック: 34回この商品を含むブログ (29件) を見る目が見えないということは、たんに視知覚を欠くということではなく、むしろ目…

最後の琵琶法師、山鹿良之(1901–1996)

琵琶法師―“異界”を語る人びと (岩波新書)兵藤裕己(Hiromi Hyodo, 1950–)著『琵琶法師―<異界>を語る人びと』(岩波新書)を迷わず買った。テーマもさることながら、帯表の「演唱の実像を伝える稀少な映像DVD付き」、つまり付録に俄然惹かれた。子供の頃か…

ノモンハンの記憶

朝日新聞(夕刊)で昨日から「ノモンハンの記憶 『事件』から70年」と題された連載が始まった(文:永井靖二、写真:筋野健太)。ノモンハン事件(1939年)から70年を機につくられた日本、モンゴル、中国の共同調査団に同行取材した内容である。筋野健太氏が…

アメ車

車名もメーカーも未詳。2004年にアメリカに渡った時に、残念だったことのひとつは、20世紀の負の遺産の象徴ともいうべき不必要に病的に大きなアメ車をほとんど見かけないことだった。数年前にみんな日本車に買い替えたよ、と聞かされた。それでも時々アメリ…

オホーツクのヴィーナス

米村喜男衛著『モヨロ貝塚』(asin:B000J9GCLI)の扉のカラー写真に写っているモヨロ貝塚から出土したセイウチの牙製のクマの彫刻にはその胴体に美しい点線模様がきざまれているという。それはアイヌのイヨマンテの儀式を連想させると司馬遼太郎は記し、こう…

達布山展望台

山﨑ワイナリーのある丘陵に瘤のような小さな山がある。変わった名前の達布山(たっぷやま)。「太布山」と表記した例もある。標高わずかに143.8mの山であるが、山頂の達布山展望台からは石狩平野を365度見渡すことができる。(二等)三角点が設置されている…

白亜紀の記憶

昨日訪れた山﨑ワイナリーのある三笠市はかつて炭坑で栄えた。石炭が採れるということは、ある意味で遠い時代の植物の記憶が蘇るということだ。石炭は、石油も、古代植物起源の化石燃料である。その同じ土地には遠い白亜紀の海の記憶も現存する。アンモナイ…

Yamazaki Winery Merlot 2006

先日簡単に紹介した北海道では無理だと言われてきた各品種の葡萄をみごとに根付かせ、国際的に評価されるワインまで作り出した三笠市の達布にある山﨑ワイナリー(http://www.yamazaki-winery.co.jp/)を訪ねた。好きなメルローを一本買った。広大な田園地帯…

過去からのメッセージ

先月20日、米映画監督ロバート・アルトマンが他界した。アルトマンといえば、私が高校生の頃テレビで連続放映されたのを毎回必ず観ていた『M*A*S*H』(1970)が、あのユーモアとペーソスに溢れた主題曲「Suicide is Painless」とともに忘れられない。『M*A*S…

ヒストリーロンダリング,モンテネグロ

朝日新聞の日曜コラム「水/地平線」(7/9)に関本誠氏が興味深い報告「サラエボ」を寄せている。 まだ耳新しい流血なしのモンテネグロ独立を祝う式典が13日古都ツェティニエなどで開かれる。しかし、20万人の犠牲者を出したボスニア紛争を最前線で取材し今…