詩集

山本博道詩集『バゴダツリーに降る雨』

パゴダツリーに降る雨 詩は「reminder」だと言った詩人がいた。詩は読む者に忘れていたことを思い起こさせる言葉の装置のようなものだと。そしてその詩の言葉そのものは速やかに忘れられるべきだと。しかし、今までそんな詩に出会ったことはめったになかった…

羈旅

死をゆく旅―詩集 「羈旅」は古くは「羇旅」と書き、「きりょ」と読む。旅といえば、馬と道連れの旅であった時代を彷彿とさせる言葉だが、『万葉集』以来、「羇旅発思」は和歌・俳句の部立(ぶだて)、つまり分類の一つにもなっている。『万葉集』では巻11と…

同じダチュラでも

人のいるところは世界の隅々まで いかがわしさに満ちあふれているが よくぞここまで来たのものだと ぼくはじぶんがその一人なのも忘れて 水色の空に浮かぶ鰯雲を見る 季節はいつしかまた秋になり 猛毒をもつダチュラの黄色い花が トランペットを吊した形で咲…

冷雨、九月

雨はいちだんど激しく カーテンはちぎれて垂れ 「冷雨」より(『正津勉詩集』現代詩文庫、1988年、83頁) 熊谷市広瀬のナオザネ堂から届いた古書『正津勉詩集』(現代詩文庫、1988年)の扉に黒のボールペンで署名があった。かなり崩れた書き方だが(酔っぱら…