ヴェルレーヌの余白に en marge de Verlaine たこ八郎の呟き

たこ八郎(1940–1985)がヴェルレーヌ(Paul Marie Verlaine, 1844–1896)の詩句を呟いたという逸話が伝えられる。はじめてそれを聞いた時、意外ではなかった。むしろ腑に落ちた。 たこ八郎は、元全日本フライ級チャンピオン斉藤清作である。現役時代カッパ…

この世の誰も知らない花

かつて詩人の辻征夫(つじゆきお、1939年–2000年)は「キリンナツバナ」という名の「この世の誰も知らない」花を同名の詩に詠った。 おれはおれでなっとくするまで 眺めているともいえないキリンナツバナ この世の誰も知らないキリンナツバナ 辻征夫「キリン…

I like being a nobody...

New Year’s Day reading at St. Mark’s from Jonas Mekas' Diary, January 3, 2011 1966年に創設され、今年で37年目を迎えた The Poetry Project 主催の元日恒例二分間詩マラソン朗読会に参加したジョナス・メカスは、映像作家のマルタ・コルバーンがパリの…

誰にもみちびかれず、「何もしないこと」を学んできた

あなたは覚えているだろうか。あのしばれる冬の夜、雪の上に積まれた薪木に一緒に火を熾したことを。奄美やブラジルの精霊が現れたあの夜のことを。別れ際にあなたは言った。「もう会わないだろう」と。あれから何年経つだろう。あなたの旅の消息は途絶えが…

Jonas Mekas @ Oil Kills Poets Spill

ジョナス・メカスの10月17日の日記に‘Oil Kills Poets Spill’と題したビデオがアップされた。説明はない。珍しくYouTubeに投稿されたビデオなので、ここでも共有しておきたい。 「原油は好きだよ。原油に罪は無いんだ。罪深いのは人間さ、、」とジョナス・メ…

言葉は何度でも遅れてやって来る

もう更新されないブログを毎日見に行く。それはウェブ上に浮ぶ「墓標」のようなブログだ。以前それを私は「詩集」と呼んだ。2010-07-25に更新された「(終わりの歌)」と題された詩を最後に、そこに「・・・はい。もうここは終しまい」と書かれている通りに…

ラブレターインク

詩人の吉増剛造さんのエピソード。 奥さんからモンブラン社製「ラブレターインク」という名のインクをプレゼントされて以来、インクの色の魅力にはまってしまった。ちなみに、赤紫と茶の中間といった微妙な色合い。 『男の隠れ家』2009年12月号、142頁 その…

歌の誕生:メカスの日記から

哲学者や思想家は自分が築いた論理を整然と組み立てて、新しい考え方を打ち出そうとしています。でも詩人というのは、自分が蓄積してきた知識や論理に邪魔されちゃうこともある。そこから外れたり離れたりした方がいいの。頭が冴えてきっちり動いていると詩…

西戸崎詩歌集

id:tanikさんが「詩歌集リンク」を作られた。 西戸 崎(saito misaki)詩歌集 腹の座った「ロッカー」らしいストレートな言葉の数々。例えば、「病み上がりのロッカー」 俺はロッカー 自称ロッカー 何でもいいじゃないかロッカー 最近ちょっと身体にメスが入…

夢の足音

詩は宛先のない手紙なのかもしれない。誰にいつどうやって届くか分からない手紙。それはもしかしたら未来や過去の自分に宛てられているのかもしれない。昨年暮れに東向島あたりを一緒に歩いた(濹東巡礼報告1)「詩人」大和田海さんが、風太郎を悼む詩=手…

島尾伸三『季節風』を読む3

『季節風』に収録された全117枚の写真には通常のクレジット*1とは異なって、撮影場所に関する簡潔な記述と不思議なフレーズ(日英併記)が添えられている。不思議な、というのはその117個のフレーズは、すべて繋げると一篇の詩になるように思われるからであ…

最良の時、静寂がきこえる

音楽という希望? 天国にいるベートーヴェンに感謝の手紙を書く若い魂があり(http://d.hatena.ne.jp/kaiowada/20081221/1229871872)、究極の「音楽」を切望する若い魂がある(http://d.hatena.ne.jp/alsografico/20081221/p1)。そして、途方もなく激しく…

今いる場所に言葉を届けようとして

今いる場所に言葉が届かない。届けようとしてもがく。言葉の海が時化る。決して届かないことに気づかされたとき、届かないままに言葉の海が凪ぐのを待つと、馴染んでいたはずの言葉たちが見知らぬ姿を現わし始めることがある。そんな時、詩の言葉の傍にいる…

白い暗闇、黒い光 Jonas Mekas

くまさん(『知られざる佳曲』)に薦められたチュルリョーニスの交響詩「森の中で」のCDを聴きながら、ジョナス・メカスの詩「森の中で」(村田郁夫訳、asin:487995375X)を読み直していた。その極端に短い行、基本的に一語で折り返し、続いてゆく詩形は、ま…

ジョナス・メカス「森の中で 1」

そして 私も 人生の 道のりの なかばを 過ぎて、 暗い 森の中へ 入って 行った、 *1そして そこには 街道も なければ 小径さえ ない、 そして ふたたび 私は なにもかも 最初から 始めねば ならない、 そして 考えに 考えた すべての こと、 それが 私自身の…

愛は不在そのものである

*1 昨日のエントリー「生命維持装置としての詩」の蛇足。昨日もちょっと触れた、ジョナス・メカスがおそらく「彼自身のための歌」でもあると感じているはずのゲンナジイ・アイギの「私自身のための歌(SONG FOR MYSELF)」はこう始まる。 secret song: "I wa…

生命維持装置としての詩:『アイギ詩集』

メカスの365日映画のおかげで旧ソ連のチュヴァシ出身のゲンナジイ・アイギという名の詩人を初めて知った。 a Chuvashian poet, Gennady Aygi:365Films by Jonas Mekas(2007-11-21) それで興味が湧いて、メカスが強く薦めていた"FIELD - RUSSIA"(New Direc…