参加者の皆さん、こんにちは。
ジョナス・メカスさんの独立映画にかける深く強い意志と限りなく広く柔らかい感受性の持ち方は非常に参考になったと思います。時間が足りなくて、かいつまんだ解説しかできなかったので、私がビデオから看取したエッセンスを簡単に書き留めておきます。
......映画を作ること(結果、成功)を性急に求めるのではなく、「撮る」ことがとにかく楽しい。「撮る」ことが、食事したり、愛したり、酒を飲んだりするのと同じである。踊ったり、歌ったりすることが体が求める自然な、深い行為であるのと同じように、「撮る」こともまた体が求める行為のひとつである。そしてそれは「自己表現」などではなく、世界の側の叫びや嘆きや喜びが「私の体」という媒体=メディアを通して、ある形を与えられて、外に出てくることだ。そのために耳を澄ましたり、凝視したり、手で触れたり、軽く叩いてみたり、して、凝り固まりがちな「私」を解きほぐしながら世界に向かって開いていくこと......
質疑応答では、安藤君は、外から自分が吸収したものを何らかの形にして再び外に出してやる、表現する方法、自分なりの方法を見つけたい、と意欲を語り、齋藤君はビデオに登場した沖縄の映像作家高嶺さんの姿勢に触れて、身近なものへの新鮮な目の向け方に感心したと語ってくれました。
その際に話したように、この演習では最終的にはデジタル技術の力を借りて仕事をしてもらうことになります。しかし、けっしてテクニックに走ったり、コンセプトに振り回されたりせずに、ごく身の回りの出来事をよく観察したり、自分や親しい人の言葉や心の動きなどに耳を澄ましたりして、地に足の着いたリアルな仕事をしてもらいたいと思っています。多くの人は勘違いしているようですが、素材は足下に、身近なところにいっぱい転がっているはずですし、それらを丁寧に拾い上げ、磨いてやるだけでも、価値のある仕事になるはずです。
えっと、思ったかもしれませんが、私はみなさんの演習での活動を「仕事」と位置づけています。将来社会に出てからも通用するような真摯な取り組み方を身につけてもらいたいと考えているからです。
ところで、演習が始まって1ヶ月たったばかりですが、1月の今期最終回には、それぞれの仕事の第一回中間報告をしてもらう計画です。