デジタルメディア入門

受講生の皆さん、今晩は。

今回の授業では、「思想篇」の続きとして、「日本語のタイポグラフィ」の歴史に触れましたが、日本語の文字のデザインに関して、とにかく私たちは、あれだけ美しく豊かな文字の歴史の「成れの果て」のような文字環境の中にいるということが分かったでしょうか?私たちは忘れたり、失ったりしやすい動物です。一度失われたものを取り戻すことは不可能に近いくらい大変です。言葉というものは「意味」や「物語」を伝える媒体であるのみならず、もっと厚みのある、もっと奥行きのあるヴィジョンをも伝えることができるはずのメディアです。次回はヒトにとって文字も含めた「かたち」が誕生する現場、社会を超えた宇宙スケールの視野でデザインの根源を考えたいと思っています。また、文字表現に関しては貧相なデジタルメディア環境ですが、それでもかなり楽しめる、そこそこ華やかなフォントの世界を次回は紹介します。次回、原理篇に関しては、前田ジョンの『MAEDA@MEDIA』から非常に面白い話題をいくつか紹介します。実践篇に関しては、Webページで文字をテキストとして扱う場合とイメージ(画像)として扱う場合の違いについて解説します。

さて、「デザイン」がたんに外観を飾るものではなく、社会のあり方にも深く関わっているのだという論点は理解できたでしょうか。私たちの身の回りにあるモノから、私たちが住んでいる家、出入りする建築物、都市、地域に至まで「デザイン」は奥深く関わっています。それは単に物理的な側面だけでなく、私たちの精神的な「かたち」にまで深い影響を及ぼす「ちから」でもあるのです。ですから、皆さん一人一人がそれぞれの人生において経験するあらゆる場面で「デザイン」は顔を出しているはずです。それらを深くそして批判的に受けとめる感覚を磨き、少なくとも自分が関わる時間空間において「デザイン」の観点から持論を展開できるようになりたいものです。