参加者の皆さん、こんにちは。
ジョナス・メカスの「静止した映画」はどうでしたか?映画と写真の「間」そのものとしての作品が提示している問題は、逆に、メカスの映画の本質を照らし出してもいることに気がつき始めましたね。つまり、彼の映画は限りなく写真に近い映画だということに。
さて、今回の後半は予定を少しだけ変更して、青山真治監督の『路地へ---中上健次の残したフィルム』を観るまえに、少し予備知識をもってもらうために、ドキュメンタリー番組『作家中上健次の世界』を観てもらいました。小説における物語的な想像力の根源に触れるというテーマのもとに、作家中上健次の世界にすこしだけ触れることができたと思います。紀州熊野を出発点に、ソウル、ニューヨーク、新宿歌舞伎町と渡り歩きながら、「路地」という言葉で表象される複雑な時空間を模索する中上の姿は感動的でした。それは単なる土着主義、地方主義ではなく、メカスの思想にも通じる、普遍的な「ルーツ(根)」が張る「場処」、nowhereを自らの生き方の中で具現することであることにも気づいたことと思います。
次回はまず『路地へ』を観てもらってから、「路地の思想」とでもいうべき考え方を深めます。