神の視点

受講生の皆さん、こんにちは。
今回はまず、
1)前回の復習を兼ねて、アメリカにおける進化論教育の現状、ID(インテリジェント・デザイン)説にふれながら、この講義でいうところの「神の視点からの思考実験」との違いについて説明し、宇宙観測にまつわる時間感覚、萱野茂さんの話をしました。それから、

2)配付した資料を使いながら、人類史の第1章として、文字の発生にいたる「観念技術」、「情報の外部化」の歴史を解説しました。文字は人類が発明した恐るべき能力をもった外部記憶装置です。文字には人類の記憶が集約的に注ぎ込まれているわけです。ただし、文字に向かわない歴史、文字を持たない文化もあることを忘れないでください。また例えば、踊りは体を使って時空間に見えない文字を描き、そのメッセージを個体を超えたレベルに届かせようとする行為であること、そしてそれは遠く宇宙の運動、リズムと共振していることなどにも留意してください。最後に、

3)ビデオ「ダンサー近藤良平」を観てもらって、近藤さんが独特のダンスにかける心意気の一端を垣間見てもらいました。「言葉にできないものがあるから、言葉にするとかえって伝わらないから、体で表現する」という彼の言葉に共感した人が多かったようでしたが、言葉にできないものとは、2)でやった、言葉を生み出したもの、「思い」のことです。ただし、普通の思いつきではなく、宇宙に起源をもつような深く複雑な波動、リズムであるような「思い」です。それは何故かたいてい「喜び」、「生きている喜び」の姿をとって現れるようです。だから観客も自然と踊りだすのでしょう。ダンスだけでなく、音楽もそうですよね。また、彼の「自分たちの踊りを観てくれた人の中から、明日会社止めます、と言う人が出て来る、そういう状態を目指している」という過激な言葉に感心した人も多かったようです。ちなみに、私(三上)はかりに近藤さんが札大に来て私の講義を聴講したら、明日ダンス止めます、と言うことが起こるような授業を心がけています。

追記)グーグルの世界戦略について補足説明しようとしてすっかり忘れました。5/12付けの情報倫理の記事でGoogleのBook Searchという驚くべきサービスのことを書きましたから、目を通してください。

次回は、人類史の第2章、人はなぜ「神」を発明したか、宗教と国家の起源は何か、に入ります。