アンディ・ウォーホルがもしウェブ・アプリを作ったら

先日書いたアムステルダムのボブのブログには毎日10個以上の多彩な「Web 2.0の兆候(symptoms)」がリンクアップされ続けている。「EVERYTHING 2.0」http://bobstumpel.blogspot.com/
8/28にリンクされた15個の内「これはまずいんじゃないか」と思いながらも、Andy Warholが大好きな私が試してみたのは、その名も「Warholit」。好きな画像をアンディ・ウォーホルのあの有名な四色のシルクスクリーン作品風に加工してくれる、Flickrにも連動しているウェブ・アプリケーションだった。
「Warholit」http://www.thomasonrails.com/warholit/
作者は南ニューメキシコ出身、27歳のプログラマー、トーマス。軍関係の仕事をしているという。オフのときにRuby on Railsで遊んでいて、この「Warholit」は彼の最初のRuby on Railsへの「襲撃forray」だという。マッチョっぽい表現が気にかかる。
http://www.thomasonrails.com/
ウォーホルが好きな人なら、私がそうだったように、ちょっと使ってみたい誘惑にかられるアプリだ。しかし、どうもひっかかる。Ruby on Railsへの「襲撃」は勝手だし、著作権法にもひっかからないにしても、これはやっぱりやっちゃいけないことじゃないか。「倫理違反」という言葉は誤解のないように使うのは難しいから、とりあえず、これは本質的な「ウォーホル違反」だ、と言っておきたい。(個人的には、ウォーホルの技法は彼が開発した「プログラム」みたいなものだから、Warholitは本質的にコピーライト侵害ではないかと私は思っている。)それに、これはRuby on Railsへの「冒涜(違反)」にもなるんじゃないか。そもそも、トーマスの文章やプロフィール写真などからは「ポップ」のクオリアなど微塵も感じられないのが、一番致命的だとも思うけど。

(一種の報道のジレンマを感じた私は、このような記事を公表するのに躊躇したが、「よくない」と思ったモノに、ちゃんと根拠あるケチをつけとくことが、将来的にもより大切なことだと思い直して公表することに決めた。)

同じウェブ・アプリケーションでも、そして同じようにそれを喜ぶ人がいたとしても、発想の段階で、そのアイデアがクオリティを欠く、つまりアサハカなものであれば、実はその喜びもニセモノなんだと思う。ネットの「こちら側」の財産を盗んで作ったウェブ・アプリケーションは「Web 2.0」の名に値しない。あくまでネットの「あちら側」に蓄積される「そのままでは埋もれてしまうような潜在価値をもった情報たち」に日の目を見させてあげるような、そして多くの人に本当に喜んでもらえるようなウェブ・アプリケーションこそが「Web 2.0」と呼ばれるに相応しいはずだ。(ボブよ、WarholitはWeb 2.0の兆候としては、技術的にはOKでも、その精神においてunacceptableでしょう。)

もし、まだウォーホルが生きていて、Ruby on Railsに挑戦してウェブ・アプリケーションを作ったとしたら、それはどんなものだろうか、と想像することは楽しい。彼はきっと「今」に相応しい「ポップ」なアプリを作っただろう。そしてもしWarholitを見たら、どんな感想を漏らすだろうか。「センスが良くないね」と言う彼の声が聞こえる気がするのは私だけだろうか。

「センス」はクオリティを含意し、クオリティにはビューティーとエシックも含まれていると私は思う。センスが良くないこととは、だから、やっちゃいけないことであり、それをやっちゃうことは軽蔑の対象にしかならない、とってもハシタナイ行為だということだ。でも、どうしてもやっちゃう恥知らずな奴が出てくるのが社会なんだよね。だから、ちゃんと「筋の通った」ケチをつける奴もいなきゃバランスがとれないわけだよね。

と、ここまで書いてきて、フト思った。ボブなら次のようにツッコミを入れてくるかもしれない。「おまえがそんなにムキになってケチをつけなくても、偽物は「自然淘汰」されるよ。それが「ウェブ進化」だったはずだろう。お前はまだ本当には「群衆の叡智」を信じていないんじゃないのか。」ドキッ。