謎の二つの体験と奄美体験:感情と時間

昨日mmpoloさんの体験に言及してから、感情の記憶について考えていて、未だに謎の二つの体験を思い出した。何歳のころからそれが始まったのかは定かではないが、おそらく小学校低学年のころから、その二つは別々に年に数度起こった。突然起こったとしか言いようがない。

ひとつは何と形容していいか分からない深い感情の噴出体験で、「初恋の思い出に伴う甘酸っぱい感情」を数百倍、数千倍にしたような生理的にも胃袋が縮み上がるような、体の芯が震源になって全身全霊に波及するような、始まったら長いときで数時間、短くても一時間は、動けなくなるような、とにかく深い感情の沸き上がりだった。「深い」と言っても、文芸の世界では頻繁に記録されてきた「ノスタルジー」(郷愁)の一変種にすぎないのか。ともあれ、あの感情がわき上がっているときにはやはり世界は違って感じられていた。時間も空間も柔らかい透明感を帯びていた。

もうひとつは、うまく表現できないのだが、突然意識の移ろい行く速度がきっかり二倍になったような、時計のチクタクが二倍の速度で聞こえるようになる体験だった。それが始まると普段はほとんど感じられない外界と心の境界らしき壁というか膜のようなものがはっきりと感じられ、ある種の恐怖さえ感じたこともあった。外に出られなくなるかもしれない、というような。この体験もまた一時間から数時間続くこともあった。その間はじっとしているしかなかった。動こうとすると、全身に違和感を感じた。時間というか速度が元のゆっくりした流れに戻ることを待つしかなかった。

こんな二つの体験は高校生時代まで同じように続き、大学生になってからは数年に一度、といったペースになり、ここ10年以上は、全くなかった。そして、今年、私は奄美大島でずっと自分が「幽霊」にでもなったような不思議な感覚を覚えていたのだった。もしかしたら、それは両者を組み合わせたような感覚だったような気もする。すべて脳のあるタイプの「暴走」なのだろうが、よく分からないままだ。