建築家の身体論Raimund Abraham:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、42日目。


Day 42: Jonas Mekas

Sunday February. 11th, 2007 12 min. 15 sec.

At Lucien restaurant
Raimund and Richard
discuss karate,
shamans, and compassion.

ニューヨークはイースト・ヴィレッジのフレンチ・レストランのルシアンで
ライムントとリチャードが
空手、シャーマン、そして同情を
論じる。

ニューヨークの現代美術館(MoMA)やパリのポンピドー・センターの設計で知られるオーストリア出身の著名な建築家ライムント(Raimund Abraham, 1933-)と空手の師範(マスター)でもあるらしい素性不明のリチャードは、身体と精神または霊との関係について真逆の立場から持論をぶつけ合う。身体コントロールの方法論、瞑想法、心身問題等について、エネルギーと形態(フォーム)の観点から愉快に真剣に議論を闘わせる。議論は感情というエネルギーの共有としての「同情(compassion)」のメカニズムから、個別的身体を超えた身体経験へと及ぶ。最後にメキシコのシャーマン体験をしみじみと語るライムントが印象的だ。お互いの立場と人格を尊重した上で二人は議論を楽しんでいる。とはいえ、真剣であることに変わりはない。こういうふうにカジュアルにレストランなんかで、あるテーマをめぐって議論する習慣がありふれていることが素晴らしい。メカスもまたカメラの下からこぶしを見せたり、カメラの「背後」から愉快に意見を差し挟んでいる。

二人の議論が始まる前にテーブルの上に可愛らしい花が生けられた小さな花瓶がメカスの手によってセッティングされる。最後にカメラは再びその花をクロースアップする。素晴らしい。