ジョナス・メカスによる365日映画、43日目。
Day 43: Jonas Mekas
Monday February. 12th, 2007 7 min. 27 sec.
Benn Northover and his dogs
send me an early morning
video postcard from
Suffolk, England
英国のサフォークにいる
ベン・ノースオーバーから
早朝の彼と愛犬たちの
ビデオ・レターが届く
すでに七日目と十三日目に登場した英国の若手映像作家ベン・ノースオーバーがサフォークからメカス宛てのビデオ・レター("a letter to Jonas No: 1")を送った。メカスは"video postcard"と表現している。"postcard"、「郵便はがき」。
こんなチャーミングなビデオ・レターを私も誰かからもらいたい、あるいは、私も誰かに送りたい、と思わせる本当に素敵なビデオ・レターだ。早朝の凍えるような空気が伝わるなか、ベンの数少ない言葉には、後にして来たニューヨークへの恋しさ、ゼブロンでの思い出がにじみ出ている。月曜日の素敵な朝。日の出。時差ボケのせいなのか、「眠れなかった」朝、愛犬たちと思い切って散歩に出た広大な野原の真ん中で、鳥の声、朝日を浴びる樹々が、彼の言葉以上に雄弁な言葉になって、メカス、そして見るものに届けられる。「新しい一日。月曜日」。
人は人生を周期的に区切りながら、句読点を入れながら、生きている。色々な思いや感情とむすびついた記憶をその都度「過去」に封印するかのようにして。ベンはビデオの形で、ニューヨークでの素晴らしい体験に美しい過去の封印をした。葉書や手紙には本来そういう働きがあることに気づく。そして「新しい一日」が始まる。"a new day"ではなく、"the new day"とベンは重たい何かを振り切るように言う。そして、明るく"Have a good day! See you soon."
極めてプライベートなはずのビデオ・レターが、非常に詩的な深い表現にまで到達していることに私は驚いた。しかし、それはこのように公開されることを前提にして撮られたわけではけっしてなく、いつどんな形で公開されてもいい生き方をベンは、そしてもちろんメカスも、しているということだと改めて認識した。