物語の真実と歴史の事実 Andy Warhol:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、3月、82日目。


Day 82: Jonas Mekas

Friday March. 23nd, 2007
5 min. 05 sec.

A woman reveals to
me her love affair
with Andy Warhol. She
was seventeen, Andy
was twenty.

ある婦人が
アンディ・ウォーホル
との色恋沙汰を
私に打ち明ける。
彼女17歳、アンディ20歳だった。

メカスはカメラに向かい、ある婦人が語ったというアンディ・ウォーホルにまつわる物語を愉快に話す。フレームの大部分をメカスの顔が占めるほどクローズ・アップの映像。背後の白い壁と棚の上に並ぶ酒瓶がわずかに見えるだけで、部屋の様子はよく分からないが、おそらくアンソロジーのオフィス。姿が映らない一人の女性の声と一人の男性の声が聞こえる。

非常に重要な話だと言って、年の頃80歳くらいの婦人は話し始めた。まだ17歳でとても内気だった頃に、マイアミ・ビーチで、いつも大勢の若い男の子に囲まれているその人に出会った。彼女はその人のことを「アンディ・ワルホーラ」*1と発音したという。彼女は彼のコテージを訪ねたりもしてアンディと親しくなった。しかし、あるとき、アンディは彼女に、僕は同性愛者になりたくないんだ、と告白したという。それを聞いたまだ純真だった彼女はどうしていいか分からなかった。その後数回彼に会ったが何も起こらなかった。「あのね、私はユダヤ人なの。*2何年もの間、罪を感じてきたの。もし私が本当に彼とデキていたら、全歴史は変わっていたはずよね。」ここで、メカスも姿の見えない二人も笑いを堪え切れない。「多分、そう、そうだね。」とメカスは答えたという。その後その話を誰にしても、皆、そんなのは作り話だと言って取り合わない。だいたいアンディはマイアミ・ビーチに行ったことはない、と。メカスはしんみりと、そんなことは分かってるんだ、と言う。作り話、そうだよ。でも、真実なんだ。それが物語なんだ。

物語の真実。歴史の事実ではなく。

*1:変わった姓"Warhol"は父方のスロバキア語の「ヴァルホラ」から来ているようだ。

*2:ユダヤ教では、同性愛は重大な罪である。http://en.wikipedia.org/wiki/Jewish_views_of_homosexuality参照。