"Happy" on Easter Egg:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、4月、98日目。


Day 98: Jonas Mekas
Sunday April. 8th, 2007
5 min. 26 sec.

What would Easter
be without
children and eggs!

イースター
子どもたちと
あってのもの!

春を告げる花々、黄色の水仙、紫の蘭、白いマーガレットのクローズアップ。薄暗い部屋、蝋燭の灯の下、新聞紙が一面に広げられた大きなテーブルで、四人の子どもたちがイースター・エッグのデコレーションに夢中になっている。テーブルの上にはイースター・リリィ(Easter Lily)が生けられている。カメラは子どもたちの真剣な表情、卵に彩色する手の動き、イースター・リリーを愛おしむように捉える。

母親らしき大人の女性、父親らしき大人の男性も子どもたちにまじって彩色している。母親らしきもう一人の女性がテーブルから離れたところに立っている姿、父親らしきもう一人の男性がソファに座っている姿も見える。メカスの友人である二家族合同の夕べのようだ。

場面は替わって、明るい照明の下、ユニークなデザインで見事に彩色されたイースター・エッグ(おそらく上の二家族が彩色したもの)が10個以上は入ったパッケージから一個ずつ取り出しては、そのデザインをためつすがめつするメカス。6個目の最後の卵には、"Happy"と読める。子どもの筆跡のように見える。

私のようなキリスト教徒ではない大半の日本人にとってはあまりなじみのない、復活祭とも呼ばれるイースターキリスト教ではクリスマス以上に重要な行事であるという。キリスト教における宗教的意義、ユダヤ教における「過ぎ越しの祭(Passover)」との関係、またゲルマン神話をはじめとする古代の北方神話における春の女神あるいは豊饒の女神「エオストレ(Eostre)」との関係や物語的意義等に関しては、「イースターのすべて」「復活祭イースター」など、日本語ウェブ検索だけでもだいだいのことは知ることができる。

しかしながら、メカスが「子どもたちと卵」こそがイースターの主役なのだという意味のクレジットを添えているように、春を告げる花々の傍らで、壊れやすい卵を大切に扱い、思い思いに願いを籠めながら美しく彩色することで、卵が象徴せずにはいない生命を祝福する時間を親子ともども共有することは、宗教的、神話的・物語的意味付けを離れても、人間にとって普遍的に大切な行事であることは分かる。日本ではすっかり世俗化してしまったクリスマスやバレンタインよりも、色々なレベルの生命の鼓動に鋭敏に寄り添うような古代人の心、生命を祝福する心に直結するところのある行事としてのイースターが流行したほうがいいのではないかとふと思った。卵を彩色するのは楽しそうだし。