雪花flowery snow(?)

札幌、ゆき、ユキ、雪。下界の気温はそんなに低くない、せいぜい4、5℃なので、雪といっても霙(みぞれ)。それでも一晩で場所によっては10cm近く積もっていた。

家を出たとたん、歌っているようなさえずりが聞こえた。慌ててあたりを見回すと、隣家の樹に「黒くて太いネクタイ」が特徴的なシジュウカラ(Great Tit)がいた。『フィールドガイド日本の野鳥』には、シジュウカラの地鳴きは「ツッチー、ツーツーチー、チッチッチチュカラ、ジュクジュク等」で、さえずりは「ツーピーツーピー、ツツピーツツピー、ツピツピツピ等」の繰返しと書かれている(264頁)。そう聞こえたような気もする。そもそも音声を文字表記することには限界があるが、歌のような鳴き声となると、その音声イメージを伝えることはほとんど絶望的というか不可能である。それを「ツーピーツーピー、ツツピーツツピー、ツピツピツピ等」となんとか表記した人の苦労が偲ばれる。私にはあの歌声を文字に置き換える根性はない。

藻岩山は完全に隠れていた。アスファルトの路面では車輪の跡にそって雪はかなり解けていた。

雪の記憶。

ルリカラクサ(通称オオイヌノフグリ)は雪にすっかり覆われていた。

多くの木にはこんな風に雪花が咲いた。「雪花(せっか、ゆきばな)」に当たる英語は何なのだろう。"snow flower"というと、実在する植物ヒトツバタゴ(fringe tree)のことらしい。その学名Chionanthus virginicusのChionanthusはギリシア語で「雪」を意味するchionと「花」を意味するanthosから成り、正にsnow flowerである。

逆に"flower snow"では、こんな感じの、花びらの上に雪がうっすらのった綺麗な状態をイメージするらしい。形容詞floweryを使って"flowery snow"ならOKだろうか。それとも"snow like flowers"だろうか。それとも...

ここには、英語では、二つの概念から第三のイメージあるいは概念を形成するときに、例えば、「花」と「雪」の場合には、どちらかと言えば、「花」の方がより「名詞的」であり、「雪」の方がより「形容詞的」であるから、両者の連結によっては、花を雪によって形容することは容易だが、雪を花によって形容することは容易ではないという一種の論理が垣間見える気がする。