Piano Improvisation by Auguste Varkalis like Keith Jarrett:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、4月、105日目。


Day 105: Jonas Mekas
Sunday April. 15th, 2007
8 min. 31 sec.

I tell a Sudek*1
joke; Auguste listens
to his own music;
Auguste tries a
piano --

私はスデック*2
のジョークを話す。
オーグストは自分の曲に
耳を傾ける。
オーグスト
ピアノに挑戦する

電話で話すメカス。カメラは机の上より少し高い位置に置かれ、メカスの胸から上が映っている。

子ども向けの本の作家で挿絵画家もやっている、たしかスデックっていう人がいるんだが、ある日彼にインタビューしたんだよ。というのも、ある本のイラストの中で男の子がピーナッツを持っているんだ。どうしてかなと思ってね。そしたら、彼は答えたもんさ。この子がピーナッツを持っていなかったら物語はどうなっていたかの方を心配しろよ、ってね。(笑い)ジョークだよ。うまいジョークだろう。

ところで、今日は何もすることがないんだよ。話し相手もいないんだ。日曜日だしね。
(白ワインの入ったグラスを高く掲げてカメラの背後の何かとグラスを合わせて乾杯の音を電話の相手に聞かせようとするメカス)
聞こえた?
じゃ、後で話そう。いつでもいいよ。
そう、彼は一生懸命働いてるよ。ボックスの中でね。

メカスは一旦、電話を置き、カメラの位置を確認し、再び受話器を持って電話をかける。しばらく待つも、諦めて受話器を置く。

場面は替わり、ピアノ曲が聴こえる。男がこちらに背を向けてカメラの前にあるテーブルの向こう側、部屋の隅にあるラジカセのボリュームのつまみを回している。男はカメラに向き直り、微笑みながら、テーブルの席に横を向いて座る。男はオーグスト・バルカリスだ*3。非常に内省的なピアノ・ソロの演奏。オーグストってこんな曲を作る男だったんだとはじめて知る。なかなかいい。オーグストは、メカスにリトアニア語で話しかける。なんと、英語字幕がちゃんと入る。

ちょっとノスタルジックだけど...

映画のなかで、何かが今まさに起ころうとしている時のようだろう...

バックグラウンド・ノイズがたくさん入っているだろう...

わー、誰か他人が弾いてるように聴こえるな、
自分じゃないみたいだ...

(いいじゃないか、お前、いいじゃないか、とメカス。)

(カメラは壁に貼られた暗い表情の男顔写真にクローズアップする。「クルト・ヴァイル(Kurt Weill, 1900-1950)も聴いてるよ」とメカス。)

(カメラは大きなギンズバーグ(Allen Ginsberg, 1926-97)の顔写真をクローズアップする。)

(しみじみとした表情で聴き入り、涙を拭うオーグスト)

キース・ジャロッド(Keith Jarrod)(キース・ジャレット(Keith Jarrett)の間違いだと思われる。*4)の影響あるかな...

すごく郷愁を誘うだろう...

わー、水中を泳いでいるみたいだ...

(メカスも目頭を拭う)

あのころはピアノがあるいい時代だったな...

ここで最後の滴が落ちるんだ...

場面は替わり、アップライトのピアノに向かい今の曲を弾くオーグストの後ろ姿。引っ越して来たばかりの、まだ荷物が何もなく、ピアノだけが置かれたマンションの一室のように見える。

*1:"Sudek", Mekas mentions as a children book writer and illustrator, is not found on the Net. But we find Josef Sudek who is a very famous one-armed Czech photographer. cf. Josef Sudek(Wikipedia Cesky), Josef Sudek - The master of photography, Josef Sudek, Josef Sudek: A View of a Private World, Josef Sudekby Charles Sawyer[Originally published in Creative Camera, April 1980, Number 190]

*2:ウェブ上にはメカスが語るような児童文学の作家で挿絵も描くスデックという名の人物に関する情報は存在しない。スデックといえば、世界的に有名なチェコの片腕の写真家のヨゼフ・スデックだけである。ヨゼフ・スデック 写真集参照。

*3:オーグスト・バルカリスは今日で四度目の出演だが、彼に関する情報は日本語では皆無。英語でもウェブ上には殆ど存在しない。ここの他数カ所に見られる、メカスの映画"AS I WAS MOVING AHEAD OCCASIONALLY I SAW BRIEF GLIMPSES OF BEAUTY"(2000)のサウンドトラックのピアノ即興担当者として名前が登場するだけである。

*4:キース・ジャレットと言えば、モーツァルトの遺伝子を一部受け継いだようなジャズ・ピアニストで、しかも非常に内省的なピアノ即興演奏で有名である。大学生の頃に買ったキース・ジャレット・トリオのLPアルバムSOMEWHERE BEFOREを出して来て、久しぶりに聴いた。YouTubeにはKeith Jarretteの演奏ビデオが沢山アップされている。中には日本でのコンサートで、日本人の指揮者による日本の交響楽団と一緒にモーツァルトのピアノ協奏曲(K.483)を演奏しているビデオもある。