ジョナス・メカスによる365日映画、5月、121日目。
Day 121: Jonas Mekas
Tuesday May. 1st, 2007
8 min. 22 sec.
The yearly benefit
concert to keep
Film-Maker's
Cooperative going -
April 23rd --
フィルム-メイカーズ・コーペラティヴ
存続のための
ベネフィット・コンサート。*1
4月23日。
"Film-Maker's Cooperative"を以前は「映像作家同盟」と訳したが、字義的には「映像作家協同組合」が正しいだろう。しかし日本語の「協同組合」のニュアンスとはかなり趣きを異にすると判断してやや大げさな「同盟」と訳したのだった。ウェブ上には"Film-Maker's Cooperative"の日本語訳は、カタカナ表記の「フィルムメーカーズ・コーポ」、私の「映像作家同盟」の二つしかない。内実としては映像作家の活動を独自の協同体制によって支援する組織なので、日本語の「同盟」、「協同組合」はピンと来ない。「コーポ」だと近所の生協をイメージしてしまう。そこで、ここでは仕方なく「コーポラティヴ」と単語をまるごとそのまんまカタカナ表記することにした。
ジョナス・メカスの映画思想にとって、アンソロジー・フィルム・アーカイヴズ(Anthology Film Archives)が歴史的文化的拠点だとすれば、フィルム-メイカーズ・コーペラティヴ(Film-Maker's Cooperative)は政治的経済的拠点である。前者は独立映画、前衛映画、実験映画等と呼ばれる非商業主義的な芸術映画の収集、所蔵、定期的公開を目的とした有機的なアーカイヴの構築を行う。後者は主に現役映像作家の作品を独自の配給システムにのせる。60年代初めから開始された映画界のエスタブリッシュメントに対するメカスの戦いは、両面作戦だ。言及されることの少ないフィルム-メイカーズ・コーペラティヴの重要性は、現役作家たちの孤独な活動と社会をつなげるパイプの役割を担っているところにある。その思想的な特徴は多くのボランティアにも支えられた未知の可能性に賭けるオープンな心の協同（コーペラティヴ）にある。また独自の作品レンタル・システムは、作品の社会的評価にもつながる経済的還元を作家にもたらす。
メカスは前者アンソロジー・フィルム・アーカイヴズを拠点にして、映画の「真実」を啓蒙する一方で、フィルム-メイカーズ・コーペラティヴを拠点にして、「真実の映画」を撮り続ける作家たちの活動を支援するための新しい経済的基盤をも整えようと戦ってきたわけである。
フィルム-メイカーズ・コーペラティヴの公式サイトの「歴史(History)」で、メカスによる気合いの籠った二つの文章が読める。一つは近年書かれた「フィルム-メイカーズ・コーペラティヴ：小史(The Film-Maker's Cooperative: A Brief History)」。もう一つは1962年に書かれた「ニュー・アメリカン・シネマ・グループの第一声明(The First Statement of the New American Cinema Group)」である。
メカスはフィルム-メイカーズ・コーペラティヴの共同創設者の一人であるが、現在の経営最高責任者(Executive Director)、日本的には理事長は、セラ女史(MM Serra)である。公式サイトのここから、"MM Serra interview with Jonas Mekas: History of American Avant-Garde Film(40:04)"というセラ女史によるメカスへのインタビュー番組の録音を聞くことができる。そのなかで、メカスは1962年フィルム-メイカーズ・コーペラティヴ創設当時のアメリカ映画界の状況や創設の動機と目的、その後の状況の変化などについて詳細に語っている。
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今年で３回目のフィルム-メイカーズ・コーペラティヴの活動を盛り上げるために年一回開催されるベネフィット・コンサートの舞台裏。コンサート自体の中身は「梗概(Synopsis)」に詳しい。今回の筆頭に挙げられているのは、4月14日にパティ・スミスとコラボレートしたフィリップ・グラス(Philip Glass)のピアノ・ソロのライブだったらしい。しかし今日のフィルムではコンサートの模様は最後にそのフィリップ・グラスの演奏の様子が、メカスのスピーチの声に重ねられて少し写るだけである。他は会場に集う知人たちとの親密なやりとりと彼らの横顔。
*1:日本でいう「チャリティ・コンサート」のこと。
