Music & Dance, Peter Kubelka:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、5月、128日目。


Day 128: Jonas Mekas
Tuesday May 8th, 2007
8 min. 29 sec.

a lesson in
country dancing
near Vienna

ウィーン近郊の町の
カントリー・ダンス
のレッスン

夜。車を降りて、開け放たれた扉から明るい光が洩れる建物に向かう。アコーディオンの懐かしい曲の演奏が聞こえる。小学生か中学生のときに踊ったフォークダンスの曲だ。メカスは建物入口の敷居のところで止まる。中は、明るい照明の、湾曲した低い天井の、そんなに広くない部屋で、アコーディオンの伴奏に合わせて、五組の若い男女のペアが両手をつないで、数種類のステップのチークダンスをしながら、円を描いて進行する。ペアは途中で順次入れ替わっていく。十人全員が輪になって手をつないで踊るパートもある。メカスは同行しているペーター・クーベルカ(Peter Kubelka)とあご髭を蓄えた若者の笑顔を撮る。メカスはカメラを自分にも向ける。画面が曲に合わせて踊っている。

ステップを指導するのは、一人の年配の女性。カメラは数人の楽しそうな表情をクローズアップする。一人、踊りの輪から離れて手持ち無沙汰の様子で座っている青年がいる。カメラは部屋の隅っこに無造作に置かれた箱、棚の中のワイヤーをクローズアップする。ダンス教室専用の部屋ではなさそうだ。普段は倉庫かなにかに使われているようだ。1セッションが終わったところで、ペーター・クーベルカが「ブラボー」と拍手する。

メカス一行はその場を離れ、暗い夜道をどこかへ向かって歩き始める。あのダンスは今風でモダンなところもあって、とてもいい、とクーベルカ。一行を先導するように前方を歩くクーベルカの足元に広がる綺麗な石畳が見える。背後から、再びアコーディオンの演奏が聞こえてくる。彼らは本当にあの伝統的なダンスを覚えたいんだな。彼らの父や祖父も踊ったんだろうな、とメカス。そうさ、とクーベルカ。メカスは振り返って、ダンス授業の続く建物を捉える。

***

クーベルカは五度目の登場。そういえばウィーン在住だった。一番最近登場したのは4月19日で、場所はマンハッタンだったが、3月6日のフィルムではウィーンの自宅でチベット・ゴングの演奏を披露したり、3月9日のフィルムではメカスをウィーン郊外のヴィレンドルフのヴィーナスに案内した。他には、1月26日にフランスはモン・サン・ミッシェルでメール・プラー風オムレツの作り方を一緒に習ったのだった。

365日映画の脈絡としては、5月5日のNYURIによるPoongmul、韓国の伝統的な音楽と踊りにつながるのだと思うが、それ以前に、その土地の生活に根ざした音楽と踊りに継承されている言葉を超えるポジティブな力に対するメカスの深い愛情を改めて感じる。かつて、野原で自らアコーディオンを弾きながら踊るメカスの映像を見たことを思い出した。なんて自由な人なんだ、とそのとき思った記憶がある。