ジョナス・メカスによる365日映画、10月2日、275日目。
Day 275: Jonas Mekas
Tuesday, October 2nd, 2007
7:18 min.
about two trees
in front of
80 Wooster Street
Manhattan
マンハッタン
ウースター・ストリート80
の正面にある
2本の樹について
2003年8月27日、メカスはウースター・ストリートの80番の建物の正面にある二本の樹を訪ねた。現在は一階にKENZOのお洒落なショップが入っているその80番の建物にはその昔フルクサスの創始者ジョージ・マチューナス(George Maciunas, 1931-78)が住んでいた。そして「フィルムメーカーズ・シネマテーク(the Film-Makers Cinematheque)」が入っていた。さらに1967年に「フルクサス・コーポレイティヴ(the Fluxus Cooperative)」が設立された。芸術家の街としてのソーホー(SoHo)の始まりである。
メカスはその二本の樹のうちの一本に触れたり、抱きしめたりしながら、植樹の逸話を披露する。1967年のある日マチューナスがウースター・ストリートの端っこのどこかから持ってきたまだほんの小さな木とは云えないような幼木を二人でそこに勝手に植えたのだという。ある朝その樹の傍にいたメカスは、近づいて来た女の警官に違法だから撤去せよと命じられたが、マチューナスに相談した上で、機転を利かせてボレックスのカメラを用意し、抜きたきゃ、自分で抜け、それを撮影するから、と応酬した。女警官は黙って立ち去り、二度と戻って来なかった。
それから四年後、2007年9月8日、メカスは再び、その樹を訪ねる。幹にはマチューナスの創始したフルクサス運動の経緯とソーホーの歴史が簡潔に書かれたプレートが固定されていて、最後に次のようにある。
Fluxhouse Cooperative II
No.33 of 33 sites commemorating important moments in NYC and Creative Time's history, 1974-2007, www.creativetime.org
ニューヨークが最も創造的だった時代を記念する33番目の場所の目印になったわけだ。メカスが語ってくれた逸話を知った者にとってはその二本の樹こそが文字通りの記念碑であるが。