専門演習1 西洋哲学史を学ぶ

西洋哲学史―古代から中世へ (岩波新書)

西洋哲学史―古代から中世へ (岩波新書)

西洋哲学史―近代から現代へ (岩波新書)

西洋哲学史―近代から現代へ (岩波新書)

二年生の高崎君と橋本君の二人が相手の専門演習1では色んな意味でのウォーミングアップを終えて、先週から熊野純彦著『西洋哲学史 古代から中世へ』(岩波書店、2006年)を少しずつ読み始めている。これが終わったら、同じ著者の『西洋哲学史 近代から現代へ』に進む計画である。各章ごとに交代で担当し、レジュメを作成配付し、プレゼンテーションの練習も兼ねて、ホワイトボードを使いながら口頭で解説する。私は適宜つっこみや補足を入れ、最後に全体を整理する。

前回が橋本君担当の「第1章 哲学の始原へ」。副題には「いっさいのものは神々に充ちている」とあり、扱うのはタレスアナクシマンドロスアナクシメネス。熊野さんの非常に柔軟かつ深い言語感覚に裏打ちされた文体を味わいながら、地中海とせめぎあう陸地の当時の交通の要所でもあった土地で世界の「アルケー(始まり)」、すなわち「原理」を追求する「哲学的思考」が産声をあげた現場に三人で臨んだ。面白かった。橋本君は他の授業と家業手伝いの合間を縫ってちゃんとレジュメを仕上げてきた。水から風へ。

今回は聖徳太子こと高崎聖徳君担当の「第2章 ハルモニアへ」。副題は「世界には音階があり、対立するものの調和が支配している」、扱うのはピタゴラスとその学派、ヘラクレイトス、クセノファネス。短いが、膨大な背景知識が圧縮して組み込まれた章なので、高崎君はかなり苦労してレジュメをまとめ、しかも、各節ごとに必ず自分の意見を差し挟むという積極的な姿勢を見せてくれた。当時の「輪廻転生」の世界観を背景として、有限な肉体から無限な魂が浄化され、不死なる神的なありようへと向かう動向のなかで、世界の感覚的、現象的多様性をその奥で統べる「原理」としての「おなじ、ひとつのもの」をめぐり、ピタゴラス(派)の「調和」(数や比)の思考、そしてそのような「調和」を生み出すとされるヘラクレイトスのより原理的な「ロゴス」と呼ばれた「対立」や「闘争」の思考。「ひとつの、おなじもの」をめぐる思考の深まりを追う。数比的調和から調和を生み出す根源的対立へ。

次回は橋本君の担当で「第3章 存在の思考へ」。副題は「あるならば、生まれず、滅びない」。扱うのはパルメニデス、エレアのゼノン、メリッソス。

なお、もしこの演習に関心のある学生さんがいたら、本を持参の上、門を叩いてください。いつでも歓迎です。毎週木曜日午前10時40分から6605研究室でやっています。