ジョナス・メカスによる365日映画、11月24日、328日目。
Day : Jonas Mekas
Saturday, November 24th, 2007
7:25 min.
a visit to Nijole
Valaitis, sister of
George Maciunas--
ジョージ・マチューナスの妹
ニヨーレ・ヴァライティスを
訪ねる
メカスとハリー・スタンダール(Harry Stendhal)はジョージ・マチューナスの妹、ニヨーレ・ヴァライティスを訪ねた。今は亡き兄ジョージの色々な思い出を語るニヨーレ。彼女のご主人を含めて四人でテーブルを囲む。彼女の背後の白い壁には赤を基調にした織物のように見える作品が飾られている。ちなみに、リトアニアは輸出品の第二位が織物という国である。メカスはテーブルの上に置いたカメラの向きを調整しながら撮影している。藍色の複雑な模様のテーブルクロスの上に、空になったワインボトル、質素な花柄の大きめの磁器製のカップが目につく。というか、メカスがクローズアップする。
とても落ち着いた穏やかな口調で祖父母のことを語るニヨール。母親の母親はポーランド人で、オペレッタの歌手だった。父親はリトアニア人で、ロシア皇帝軍の将校だった。カフカスに駐留していた。戦争、革命が始まって、軍隊はリトアニアに向かったの......。
ハリーがジョージ・マチューナスの建てた家について質問する。興味深い建築だよね?何年も建築の勉強をしたんでしょう?ニヨーレのご主人、ヴァライティス氏がニヨーレの代わりに答える。建築設計やシステム工学を修めたんだ。あれはソビエト人に売ったのよ、とニヨーレ。彼は本当はアメリカに売りたかったの。本当?ジョナス、何か知っている?とハリーはメカスに質問を向ける。たぶん、もう少し複雑な事情があったと思うよ。彼はアメリカにオファーしたけど、返事がなかった。でも私がロシア人の建築家や芸術家なんかから聞いたところでは、彼らはジョージに断らずに使ったらしいよ。それはよかったわ、と笑うニヨーレ。はっきりしたことは、もっと調べなきゃ分からないけどね、とメカス。
マチューナスが設計した家は大きいよね、とハリー。そう、こんな中庭があってね、とニヨーレは手でアーチを描く。ひとつのフロアを中心にそこから上がったり、下りたりする設計だよね、とハリー。
ニヨーレはジョージと母親の思い出を語る。あるとき、不機嫌なジョージに何があったのか尋ねたら、彼が作ったボール紙を母親が白く塗りたがったらしいのよ。隙間用のね。母親はとにかく白く塗りたがった。ジョージはドアの写真を貼りたかったの。ジョージは母親とスペイン旅行中に集めたドアのコレクションを持っていたわ。母親もそれが好きになったの。でも母親は何でも白く塗ろうとしたの。それでジョージはそのままにしたの。ジョージは母親のために何百ものボール紙を作ったってわけよ。
ハリーがジョージ・マチューナスの一冊の本(タイトル不明)を手にしながら、抜粋の妙に触れる。ニヨーレによれば、ジョージは芸術の教授になりたかったという。能力はあったが、言葉が苦手で果たせなかったらしい。英語とリトアニア語だけじゃねえ。フランス語もドイツ語もダメだったのよ。普通に話すことはできたけど、ちゃんと本で勉強しなかったの。だから自分でそれ(ハリーが手にする本を指して)を作ったの。
(ここからニヨーレの住む家の中庭の映像に切り替わる。音声は屋内の会話が続く。)
死ぬ前に言ってたわ。これから天国に行くから、計画を立ててるってね。(一同大笑い。)モンテヴェルディ(Claudio Monteverdi, 1567-1643)にも会えるって。