透明な「文字」ソノモノなど、どこにもない

文字コードに関心を持った2000年頃に買った小池和夫・府川充男・直井 靖・永瀬唯著『漢字問題と文字コード』(太田出版、1999年)をこの度は漢字への関心から読み直していた。やはり「真性活字中毒者」たちが活躍していたのだった。



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本書の内容

題名 著者
JIS第3・第4水準拡張の意義と問題点 小池和夫
当今「漢字問題」鄙見 府川充男
漢字消費者に贈る弁 文字コード排外主義の三つの退嬰 永瀬 唯
表外漢字字体表記試案の読み方試論 直井靖
『東京セブンローズ』の文字について 小池和夫

東京セブンローズ

東京セブンローズ

すべて「正字正かな」で組まれたことが話題を呼んだ井上ひさし『東京セブンローズ』(文藝春秋刊、1999年)を正にその「正字正かな」ないし「旧字旧かな」の厳密な観点から徹底的に解剖、批評した小池和夫の論考の手際の良さ、鮮やかさが特に印象に残った。

やはり、どんな世界でもその世界の土台を構成する「アーキテクチャー」というか「ハード・ウェア」に通暁している者は「ソフト・ウェア」を使っているだけの者に比べて物がよりよく見えているものなのだなあと感心すると同時に再認識した。内容に関してはこの人の話を聞こう。

それにしても『漢字問題と文字コード』表紙の滲んだようにも揺れ動いているようにも見える「永」の文字イラストと「透明な「文字」ソノモノなど、どこにもない」という言葉が本書の各論考を通じて一貫している漢字さらには文字一般に対する基本的な視軸を雄弁に物語っている。ただし、文字コードとは実は存在しない「透明な「文字」ソノモノ」の表現ではあるが。

ちなみに、府川充男と小池和夫は2001年に『旧字旧かな入門』(柏書房)を出している。読むぞ。


旧字旧かな入門 (シリーズ日本人の手習い)

また小池和夫が「旧字旧かな」の諸問題を押さえる上で基本文献として挙げているが、絶版となっている築島 裕著『歴史的仮名遣い』(中公新書、1986年)を早速図書館から借出した。読むぞ。


歴史的仮名遣い―その成立と特徴 (中公新書)

ふと、情報プラトニズムということを考え始めた…。