札幌、曇り。風強し。
昨日20年前の映画『ベルリン・天使の詩』の中古ビデオを買った記録をつける際に、パッケージの写真はあえて原題のみが印刷された部分を載せた。すると、さすがにベルリン通の中山さん(id:taknakayama)は原題の「ベルリンの空(ベルリン上空)」に鋭く感応してくださった。
あの映画では、多くの場面で、空(そら)、あるいは天が象徴的に描かれていた。そもそもがアメリカからベルリンに向かう空を飛ぶ旅客機の機内で「子供」にしかその姿は見えない天使らしい中年男(ブルーノ・ガンツ)と「子供心」を忘れない刑事コロンボ(ピーター・フォーク)が「出会う」というとびっきり荒唐無稽なシーンに続いて、正に「ベルリン上空」からケネディ空港に刑事コロンボが舞い降り、天使がとあるアパートメントに舞い降りるという意味深長なシーンから始まる。そして結果的に、ピーター・フォークは「ベルリンの天使たち」を調査に来た刑事だったかのような印象さえ残す。
壁のない土地のビジョン、土地を脱テリトリー化するビジョンに溢れた映画だった。それゆえに「詩的」と言われ、「生きる勇気が湧いてくる」(中山さん)とも言われるのだろう。
それにしても、ベルリンの壁という目に見える壁が壊されて以降、次々と見えにくい壁が立ちふさがり続けているのが現代であるからして、下界を見下ろす天使にでもなるつもりで、たまに自分が住む町の上空、空を見上げる仕種を身につけることは大切なことなのかもしれない。ついでに、心の壁を溶かす笑顔をみにつける練習もね。