山葡萄



藻岩神社境内の石段に腰掛けて、『螺旋歌』(asin:4309006310)を読んでいた。「河の女神の声が静かにひびいて来た」という詩行にハッとして、豊平川が流れるあたりを見た。帰路、完熟した山葡萄(Crimson glory vine, Vitis coignetiae)の実を二房捥(も)いだ。帰宅後すぐに水洗いして、適当な器がなかったので、大きめのワイングラスに入れた。「山葡萄ワイン」。一粒口にいれた。果皮が破れ、大きな種子を覆うわずかの果肉の果汁が口中にひろがる。濃厚な甘酸っぱさ! 一瞬、顔がしわくちゃになるのを感じる。これもまた「大地の恵み」だ。とうてい辿り切れないほど複雑な物質循環の中に土地と山葡萄と私の身体はある。私は間接的に土地を食べて生きている。