屋根に登る癖がついてしまった。雪のやんだお昼過ぎに、一冊の本を持って屋根に登った。藻岩山や遠くのゴミ処理工場の煙突から昇る煙を見るだけでなく、景観に何かを映したいという気持ちが生まれていた。それは小野さん(id:sap0220)がすーっと想像力の触手を伸ばして触れてくれた私の「寂しい」心象風景に過ぎないのかもしれないが...。
断続的に何度も読み直している本を藻岩山の方に翳しながら、読んだ。寒かった。
そして、白く乾いた土埃のたつ、人気のない、時のとまったような、景色、
いつも 風は あまく
道は しずか。[中略]
(いや、もっと、細い、大切な、迂路が、きっと、無数に、あった、……)、
[中略]なにかすこし姿を変えて、ほっとしているわたしたちがいた、……。
ここがきっと旅の場所だった。
吉増剛造『螺旋歌』(asin:4309006310)300頁〜301頁