50年前の貸しカメラ、現代のレンタルカメラ


『本常一の写真に読む 失われた昭和』142頁


宮本常一写真・日記集成』上巻75頁[0031-21F]

50年前、昭和30年代、私が生まれた頃にも、「貸しカメラ」というサービスがあったことを知った。宮本常一がその記録を写真で残してくれた。その写真は佐野眞一著『宮本常一の写真に読む 失われた昭和』(asin:4582832253)では142頁に、『宮本常一写真・日記集成』(asin:462060609X)では上巻の75頁に掲載されている。固有番号は[0031-21F]である。前者では、キャプションに「カメラ屋。大分県日出。昭和32年8月21〜22日』とあり、後者では「1957…昭和32年8.22(木)」の日付の下に「日出・貸しカメラの店」とだけある。前者の解説の中で佐野はこの写真についてこう語る。

昭和32年8月、別府に近い大分県日出で撮られた「貸しカメラ 使用料一日\100」と書かれたカメラ屋の前の看板は、この時代の風俗を伝えてとりわけ貴重な一枚となっている。(127頁)

面白いことに、看板には「スポーツ用品」の文字も見える。実際に薄暗い店内には、野球のバットやバスケットボールなどが見える。「日出カメラ」店はスポーツ用品店も兼ねていたのか。隣は何の商店だろうか。店前にバス停がある。丸い看板には「大分交通/バスのりば/ひじ」と書かれている。

ところで、たまたま雑誌『CAMERA magazine no.9』(えい出版社、2009年2月、asin:4777912728)を読んでいたら、名古屋のカメラ店「ダイヤモンドカメラ シュシュ」(DIAMOND CAMERA chou-choute)が「フィルム好き向けのサービスが充実」した「レンタルカメラがあるカメラ店」として紹介されていた。


『CAMERA magazine no.9』094頁〜095頁

もちろん、すべてフィルムカメラである。レンタル中のモデルは、フジのナチュラやチェキ、オリンパスのペン、リコーのオートハーフなど初心者向けにコンパクトで使いやすい機種を中心に揃えたという。ちなみに、レンタル料金は当日1,500円、但し保証金1万円(カメラ返却時に返金)がかかる。

50年前に宮本常一オリンパスペンSで「貸しカメラの店」を撮影したように、いつか名古屋に遊びに行くことがあったら、「ダイヤモンドカメラ シュシュ」でオリンパスペン(EE3のようだが)を借りて、平成の一風俗を伝える記録として、怒濤のようなデジタル化の波に可愛(chou-choute)気に抵抗する店として「ダイヤモンドカメラ シュシュ」の店先を撮影しようか、なんて楽しく想像した。