早朝野菜をもらいに行く

私にとっては早朝の、まだ最後のちょっとHな夢を見ている頃、電話が鳴って目覚めた。帆足さんのご主人だった。これから自転車で野菜を届けるから、道を教えてもらいたいという。頭はぼーっとして働かず、ちゃんと説明できそうもなかったので、こちらからすぐに伺うことにした。とりあえずカメラをひっさげて家を出たら、雨が降り出した。急ぎ足で帆足さんちに向かった。道端の花や見慣れた畑や庭の花が目にとまるが、立ち止まらなかった。帆足さんちに着いたら、畑の茄子の花が目にとまった。綺麗だと思った。思わずしゃがみ込んで写真を撮った。帆足さんが袋を片手に家から出てきた。昨日用意して待っていてくれたという茹でた枝豆と今朝もいだばかりのキュウリとトマトを有り難く頂戴した。私の方からは昨夜用意した新しい菊の写真を差し上げた。しばらく世間話をしてから、帆足さんちを後にした。帰り道、道端に一輪ぽつんと咲くコスモスとコンギクを撮った。そして解体中のアパートのある一室に残されたクリスマスオーナメントがまだあることをなぜか確かめて撮った。雨は止んだ。帰宅してから、もぎたてのトマトを洗って食べた。美味かった。「めんこいねえのおばあさん」こと帆足夫人の笑顔が浮んだ。風太郎を一番可愛がってくれた人だ。ふと、私はその恩返しをしているのかもしれないと思った。