おばあさんは柳鰈がお好き

晴れ。下界の雪はほとんど解けて消えたが、寒い。藻岩山から吹き下ろす風が冷たい。藻岩山の頂上付近だけはまだ薄らと白い。薄い革手袋では、両手がかじかむ。今日は年内最後の枯れ葉や枯れ枝のゴミの日だ。(枯れ葉や枯れ枝が「ゴミ」とはいかがなものか、だが)散歩コースにある5、6箇所のゴミステーションはどこも紐で束ねた枯れ枝や半透明の袋に入った枯れ葉が大量に出ていた。中にはまだ咲いている菊の花もあった。Nさんに渡したい写真がダウンジャケットの内ポケットに入ったままだ。最近出会わない。「めんこいねえのおばあさん」こと帆足夫人に出会う。先日いただいたチンゲンサイのお礼を言う。おばあさんは買い物に行くと言う。途中までゆっくりゆっくり歩きながら話をする。「花も終わって、もう撮るものないべさ」「いやあ、花のようなおばあさんがいますよ」「なに、馬鹿なこと言ってんだよ、もう」椎間板ヘルニア整骨院通いしているご主人はなんと朝の3時に、私が眠りにつく頃に、腰痛をおして、あの危ない連中が縄張り争いをしているという太平洋岸の浜に、釣りに出かけたという。「二本上がったって連絡が入ったよ」「へー、カレイですか」「いや、鮭だよ」「鮭ですか! 凄いじゃないですか」「ヤナギの一枚でも上がればいいんだけどね。あんた、釣りしないのかい?」「昔少し。また始めようかな」おばあさんは鮭よりカレイが好きらしかった。冬の低い陽光は冷たく透き通った空気をレンズにして長い影をあちらこちらに投げていた。ちなみに、ヤナギとはヤナギカレイ(柳鰈)のことで高級魚とされる。