30年20万枚の軌跡


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本書は、30年間で20万枚超の写真を撮り続けた長倉洋海(ながくらひろみ)さんの旅の人生の記録への入口である。1980年のローデシアソマリアパレスチナ南アフリカカンボジアアフガニスタン(「第1章 ゲリラたちの戦線」19点)、1982年から2001年にかけてのエル・サルバドル(「第2章 エル・サルバドル内戦」46点)、1982年のレバノン1984年のイラン(「第3章 レバノン虐殺、イラン革命」15点)、1983年から2001年にかけてのアフガニスタン(「第4章 アフガニスタン---マスードと戦士たち」47点)、1985年から1988年にかけてのフィリピンと山谷(「第5章 フィリピンから山谷へ」17点)、1992年から1994年にかけての南アフリカ(「第6章 南アフリカの風」20点)、1993年から2004年にかけてのアマゾン(「第7章 アマゾン---森の大地」17点)、1999年から2003年にかけてのコソボ(「第8章 コソボ---破壊から再建へ」24点)、2002年から2009年にかけてのアフガニスタン(「第9章 アフガニスタン---山の学校」26点)、2004年から2008年にかけてのウイグルパミール高原チベット、ネパール、ウズベキスタンキルギスアゼルバイジャングルジア、イエメン、ドバイ、シリア、トルコ(「第10章 シルクロードの貌」51点)、そして2009年5月のグリーンランド(「その先へ---あとがきにかえて」4点)。全249点の写真の一枚、一枚がこれでもか、と私を深く突き刺し、あざをつけ、強く胸をしめつけた。それは長倉さん自身がその一瞬、一瞬深く突き刺され、あざをつけられ、強く胸を締めつけられたからに違いない。現代文明がほんとうの顔を見せる場所、そこで土地を家族を守るために戦う人々をつないで辿るような長倉さんの旅は、この国の底辺を見据える旅でもあったことをはじめて知った(「第5章 フィリピンから山谷へ」)。これこそ、現代のソングラインだとチャトウィンなら苦い思いを籠めて言ったかもしれない、とふと思った。

「我々は踊り、歌い、楽しく、幸福になるために、そして世界を見守るために生きている。我々は働き、祖先の記憶を忘れません。いつも父母や祖先のことを思い出すようにしています。我々の土地や家、子供を守ります。我々の健康を考え、言語を守り、よけいな情報、噂から我々の耳を守ります。それがヤノマミなのです」とダビ[ヤノマミのシャーマン]はいう。(長倉洋海『鳥のように、川のように』158頁、asin:4198930724