老作家の寓話


昨日紹介したチューリッヒで出た雑誌のロバート・フランク特集の中に、バロウズ(William Seward Burroughs, 1914–1997)の掌編「DEAD MAN BLUES」(『WESTERN LANDS』1987から)が丸ごと引用されていた。それは、処女作以降、第二作目がどうしても書けなかった川縁の貨車に住み、時々思い出したように、ジェリー・ロール・モートン(Jelly Roll Morton, 1890–1941)の「DEAD MAN BLUES」(あの映画『海の上のピアニスト』ではモートンをモデルにしたピアニストが「The Crave」などを演奏した)の鼻歌を歌うひとりの老作家の寓話だった。彼は、いつか完成するはずの第二作目の要になる「the fate of others」「2001」「well almost never」の三つのフレーズを巨大なジグソーパズルのピースを玩ぶように反芻し続けるのだった。そんな彼の人生そのものが第二作目に他ならないということをバロウズは示唆したように思われる寓話の最後には次のようなゲーテの言葉が引用されていて、感心した。


常に死に臨み、絶えず生まれ変わるのでなければ、
この暗い地上では哀れな客にすぎない。(三上訳)
 ゲーテ


ちなみに、「DEAD MAN BLUES」はこんな曲である。

Dead man blues, 3:27