前方から菱(ひし)さんが、きょろきょろと左右の道端を見ながらこちらに向かってゆっくりと歩いてきた。「菱さん、散歩ですか? 珍しいですね」「いや、排雪が入るから、除雪の状態を見て回ってたんだ」「ああ、そうですか」「ところで、あんた、パーク・ゴルフはやらないかね?」「パ、パーク・ゴルフですか、、。や、やりませんが、、」「なに、パターを習いたくてな」「そうですか。残念ながら、まだ、パーク・ゴルフは、、」「そうかい。あ、そうだ。囲碁はやるかい?」「え? 囲碁ですか? 昔ちょっと、やったきりで、最近はまったくやってませんが。あそこに碁会所ができましたよね? 行かれましたか?」「ああ、でも、あそこに来る人はみんな強すぎるんだ」「でも、このあいだ、小学生の女の子を見ましたよ。それに、初心者歓迎って書いてありましたよね」「囲碁は年齢じゃないんだ。みんな一段以上じゃないか。わしらみたいな素人では相手にならない」「そうですか。じゃあ、今度、僕でよかったら、碁会所で、、」「そうだな、そのうち、頼むよ」そういうわけで、パーク・ゴルフに誘われるわ、囲碁に誘われるわ、気づかないうちに、私の「爺度」はかなり上がり、「老人力」が着々とついてきたということか。喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか。想定外の展開にちょっと戸惑っている。ま、いいか。