古いお遍路道に光が射し、風が吹き抜ける:松本昭司さんの挑戦



昨年暮れに山口県周防大島の属島である沖家室島に松本昭司さんを訪ねた折りに、泊清寺の裏山にある八十八体順拝史跡物見山登口に立って、山頂に向かう道沿いに立ち並ぶお地蔵さんたちを見上げた。その時、何か寂しいような、もったいないような、かといってどうすることもできないという複雑な気持ちになった。ところが、なんと最近その「沖家室八十八か所」の復活作業が開始したことを松本さんの『鯛狸の豆日記』で知って、びっくりすると同時にとても嬉しくなった。それは松本さんたちによる郷土の血の通った再生事業の一環ともいえる挑戦だと思う。詳しくは下の記事で。


私が特に感動したのは松本さんが三日目の復活作業の様子を撮影したビデオだった。驚いた。松本さん、やるなあ! それは非常に貴重な記録であると同時に感動的なビデオ作品でもあった。それまで雑木林に覆われすっかり光が入らなくなっていたかつてのお遍路道に、少しずつ光が射し込むようになり、風も吹き抜けるようになり、眼下の海が見渡せるようになっていく。光と風と海がとても印象的だ。伐採作業を担当する田中照敏さんと松本昭司さんの軽妙なやりとりにも味がある。そうして、忘れ去られようとした道が少しずつ甦り、新しく生まれかわろうとする場面に私も立ち会い、その時の感動を分けてもらえたような気がした。


 沖家室島 泊清寺の八十八か所復活作業


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