尾上太一写真集『北前船』


北前船―鰊海道3000キロ


尾上太一さんの懐の深い丁寧な写真と言葉がまるで大きな帆に風を豊かに孕ませて海上を滑るように航行する弁才船のようになって、私を礼文島から日本海沿岸を南下して瀬戸内、大阪まで、数百年の海上交通にまつわる記憶を鮮やかに甦らせつつ「鰊海道三千キロ」を運んでくれた気がした。いい写真集だ。尾上太一さんが指摘するように、北前船(きたまえぶね)はモノを運んだだけでなかった。人間の交流に伴って食文化や民謡や祭りなども運ばれた。


そういえば、越後の瞽女(ごぜ)さんたちはどうやって北海道に渡ったのだろうか。北前船に乗ってやって来たのだろうか。

ニシン漁で栄えた江差には、旅芸人である越後の座頭や瞽女津軽津軽坊などが、三味線をたずさえてやってきて、色街のお座敷をにぎわせました。かれらが持ち込んだ唄に加えて、北前船(きたまえぶね)の船乗りたちが寄港先で覚えた各地の流行歌などが加わり、しだいに江差独自の唄ができてゆきます。

 100の物語[伝統・文化]民謡(「北海道デジタル図鑑」)


参照