初夢のような現実


イチイ(一位, Japanese yew, Taxus cuspidata


昨日、朝の散歩中に顔見知りの老婦人からお年玉をいただいた。彼女は去年の夏にサフラン公園で会った時に撮らせてもらったポートレートを印刷して差し上げて以来、会うたびにこちらが恐縮するほど喜んでくれた。昨日の朝、散歩中にばったりと出会った時もそうだった。ただいつもはごく短い言葉を交わして別れるのに、その時は違った。彼女はいつも持ち歩いている手提げ袋から財布を取り出して、震える手でお札を一枚抜き出して「これ」と言って私の前に差し出した。千円札だった。一瞬何が起こっているのか飲み込めずに思わず身を引いた私の手に彼女は千円札を無理矢理握らせようとした。「何ですか? 困ります」「お年玉。取って」「そんな、受け取れません」「前からお礼したいと思っていたの。感謝のしるしよ」私は彼女の勢いに押され、断り切れずに、結局その千円札を受け取った。この歳になって、しかも赤の他人からお年玉をもらうなんて、想像だにしなかった。初夢のような現実だった。だが、そのわずか数十秒の間に私は正月にお年玉をもらう子供に逆戻りしたように感じていた。母が生きていたらちょうど彼女くらいの歳だ。いただいた千円で写真用紙を買って、今年も彼女のポートレートを撮って印刷して差し上げようと小さく固く決意した。