空気を撮る写真家、ロバート・ポリドリ(Robert Polidori)


Robert Polidori Takes a Photograph, Jonas Mekas' Diary, January 6, 2011


写真に興味があるなら、こんな写真家がいることを知っておいたほうがいい、とジョナス・メカスは写真家ロバート・ポリドリ(Robert Polidori, born Montréal, Québec, 1951)を紹介してくれた。欧米では独特の質感を湛えた建築写真で知られる写真家らしい。母親はフランス系で父親はイタリア系、1951年にモントリオールで生まれたロバート・ポリドリは、18歳の時にニューヨークに行き、ジョナス・メカスの助手として働きはじめ、70年代には数多くの前衛的な映画を作ったが、80年代に写真家に転身したという経歴の持ち主である。



ポリドリは特注のキップ・ウェットスタイン(Kipp Wettstein)のカメラを使って変わった撮り方をする。


アンソロジー・フィルム・アーカイブズ内の一室で煉瓦の壁に接して置かれたジョナス・メカスの作業机にカメラを向けたポリドリは、何かを待つようにして、長い時間をかけて一枚撮った。その様子をジョナスは興味深げにビデオに収めた(撮影日は昨年の10月31日)。不思議な時間が流れていた。その写真はアンソロジー・フィルム・アーカイブズの今年1月から3月までの企画案内冊子の表紙に使われることになる一枚だった。



机の上の様子を撮るためにポリドリは一体何を待っていたのだろう? 彼は空気が落ち着くのを待っていたのかもしれないな。彼自身とジョナスの動きや呼吸で室内の空気は乱れ、いわば濁っていた。その乱れて濁った空気が澄むまでじっと待った。ポリドリはそういう待ち方を心得た写真家なのだ。彼の撮る写真には見えないはずの空気が写っているようにさえ感じる。空気を撮る写真家。そう言っても過言ではない気がしてきた。彼のように空気を撮るには、特注のキップ・ウェットスタインのカメラが必要なのかもしれない。


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