手紙の消息

平民さんの「手紙」。

手紙(「平民新聞」2010-12-31)


白い紙に手書きの黒い文字が並んでいる、ただそれだけで素敵だ。暗闇に咲き乱れる夜顔、暗闇に千切れ舞う手紙、青空をバックに風に乗った追伸の手紙の写真もイイ。綱渡りするように綴られる感謝と愛のメッセージからは惜しみなく与え容赦なく奪う心が感じられる。覚悟のほどが窺える。ジーンと来る。そして、それを運ぶ舟のような手書きの黒い文字が作り出す影と光の独特の形が、手紙を書いている人の生身の呼吸、息づかいまで伝えてくれるような気がする。書くことは、手書きの手紙にはじまり、手書きの手紙に終わるというひとつのシンジツをあらためて実感する。

語ることや書くことは煎じ詰めれば、手紙のようなものであると常々感じてきた。宛先ははっきりしていたり、不明だったりする。生者とはかぎらないし、無意識に過去や未来の自分に宛てられていることだってあるだろう。しかも思い通りに届かないことは当たり前。デッド・ストック。でも、出さずにはいられないのが、手紙。