廃庭


人が住まなくなって放置されたままの家とその庭の変化を見続けて五年たつ。人の手が入らなくなった庭では藤が物置を完全に覆い尽くし、さらに家の二階の窓にまで這い上がっている。このまま放置され続ければ、いずれ家全体を覆い尽くすだろう。その庭では年々大虎杖をはじめとする雑草が勢力範囲を拡げていて、かつて主が植えた宿根草や球根類が咲かせる花はところどころから遠慮がちに顔を出すにすぎない。一般にはもはや庭とは呼べない空間だが、私にとっては魅力的な庭でありつづけている。