and Film


写真家の鈴木理策さんによる「コダック破綻、とうとう来たか」(「朝日新聞」2012年1月25日)を読んだ。鈴木理策さんはコダックのフィルムや印画紙のやわらかな色調に魅かれた高校、大学時代の古き良き思い出を語っていた。なるほどと思いながら、そのような体験を持たない私にはどこか遠い話のようにも思えた。ところが最後にロチェスター訪問時の思い出が書かれていてハッとした。

 アメリカ各地を旅行した22歳の時(1985年)、コダックの本社があるニューヨーク州北西部の町・ロチェスターを訪れたことがある。創業者のジョージ・イーストマンの旧宅が写真博物館として公開され、19世紀から現代までのカメラや写真作品が展示されており、写真を文化として守っていこうとするコダックの精神に触れた思いがした。
 融資により業務継続されるそうだが、コダック破綻のニュースに、写真の歴史を照らし続けた灯りがひとつ消えてしまったという印象を受けた。


ロチェスターのジョージ・イーストマン・ハウスと言えば、去年の4月のこと、ジョナス・メカスを介して、DRYDEN BLOGを運営するロチェスター在住のオガワさんとカワハラさんとの奇縁がもたらされたのだった。


ジョージ・イーストマンの旧邸に写真博物館(The George Eastman House Museum of Photography)が設立されたのは1947年である。その後、1989年に写真と映画の国際博物館(The George Eastman House International Museum of Photography and Film)として再出発した。鈴木理策さんが訪れた1985年にはまだ写真だけの博物館だったわけである。写真と映画の博物館になってからは、館内にドライデン・シアター(Dryden Theatre)と呼ばれる小さな映画館も併設された。オガワさんとカワハラさんは世界中で今やそこでしか上映されることのないような映画を観ては、その詳細なレビューを中心にDRYDEN BLOGを始めたのだった。ちなみに、博物館の公式サイトの情報によれば、新たな博物館には写真は四十万点以上、映画は二万八千本、映画のスティール写真は四百万枚以上、 出版物は五万三千点、そしてカメラ等の機器類は二万五千点以上が収蔵されている。


つまり、鈴木理策さんのいう「写真の歴史を照らし続けた灯り」は「映画の歴史を照らし続けた灯り」でもあるわけだった。