新旧の帽子


古い帽子



新しい帽子


散歩の時に被る帽子を探していた。今まで被っていた帽子はかなりくたびれた。色は褪せ、ところどころに染みも出来ている。家人からは、それを被って外出するのは控えるようにとのお達示がたびたびあったが、生返事をしたり、聞こえないふりをしていた。しかし、自分でもさすがにもうそろそろ替え時だと思いたって、先週末に数軒の店を回ってみたものの、気に入った帽子はなかなか見つからなかった。あきらめかけていた。もうこれで最後にしようと立ち寄った店でも帽子コーナーにはこれぞという帽子はなかった。ところが、少し離れた棚の上にひとつだけポツンと置かれていた帽子が目に飛び込んで来た。一目見て気に入った。被ってみた。いい感触、サイズもぴったり。値段も手頃。迷わず買うことに決めた。古い帽子に比べて、かなりあか抜けて、明るい印象である。被ってしまえば、自分には見えないのだが、被ると、沈みがちな気分が少しは軽くなるような気がする。問題は古い帽子をどうするかである。最初は捨てるつもりだった。家人からも捨てることを勧められた。しかし、捨てる気にはなれなかった。この帽子を被って歩いた思い出まで捨てることになるような気がしたからかもしれない。かなりくたびれているとは言え、まだ穴が空いたり、破けたりしているわけではない。染料を買ってきて染め直してみようかと思っている。