尻別川


尻別川。上尻別橋から下流を望む。



尻別川。上尻別橋から上流を望む。



尻別川の畔の農家



上尻別橋から尻別岳(1107.4m)を望む。国道276号

尻別川 しりべつがわ

 尻別川は北海道三番目の大河で、水源は支笏湖の西斜面。後方羊蹄山(三上注:しりべしやま。所謂羊蹄山、別名蝦夷富士)をぐるっと回ってから長く西行して日本海に注ぐ。西北海道の屋根を横流している川である。尻別の意味は分からなくなったものらしい。河口地帯のアイヌは、中流以上のことを殆ど知らなかったという。古い上原地名考は「シリベツ。至て高き川と訳す。シとは至て、又は甚だなどと申意。リーとは高い、ベツは川の事にて、此川水上シリベツ嶺の麓なる故此名ありといふ」と書いた。シ・リ・ベッ(shi-ri-pet 至って・高い・川)と訳した。後段の水源がシリベツ山だからの名だというのとは直接繋がらないようだ。上原氏としては少々はっきりしない文である。
 永田地名解は「シリ ペッ shiri-pet。至高川。アプタ(虻田)土人云ふ。シリペッの山は小なれども、其の水源は高処より来る故にシリペッと云ふ。至高川の義なりと」書いた。上原氏の前段の処と同じで、シ・リ・ペッ(至って・高い・川)と解したものらしい。
 もしかしたら、長く山中を流れて来る川なのでシリ・ペッ(shir-pet 山の・川)だったのではないかとも考えて来た。
 後方羊蹄山から流れるからシリベッだという考え方もされて来たが、アイヌ地名の流儀からすると、川の名から採ってその上の山の名を呼ぶのが普通である。シリベッ川の上の山なのでシリベッ山と呼んで来たのを、和人が日本書紀にある後方羊蹄と音が似ているので、それに結びつけたのではなかろうか。

  山田秀三『北海道の地名』北海道新聞社、1984年、461頁


参照