「旅の話ほど詰まらんものはないよな」
「また始まった。へそ曲がりの屁理屈が」
「だって、今ここにいるだけでも、途方も無い旅の途上なんだから、ここではないどこかへ行くことなんて、高が知れているじゃないか」
「それは折り込み済みで、旅ってことでしょ?」
「そんな旅は糞食らえ!」
「何をそんなに尖ってるのよ?」
「冬だからだよ、たぶん」
「冬?」
「『彼はただ春までの季節を思った。冬のあいだ、そんな季節は永遠に足踏みしたまま、けっして訪れることがないとさえ思えるのだ』(佐藤泰志『海炭市叙景』)」
「・・・」
おお、夢か、、。