Emily and Robin


September 1st, 2004, Mountain View, CA


この写真を撮った五ヶ月後の日記から。

マウンテンビューにあるミシェルの家は平屋の一軒家で、周りが板塀で囲まれている。潜り戸のような扉にひも付きの呼び鈴がとりつけてあって、五ヶ月前に初めて訪れた時に僕はそのひもを引っ張ってチリンチリンと鳴らしたことをまざまざと思い出した。女の子が二人勢いよく扉を開けて出て来た。薄い化粧をして金髪をポニーテールにした十八歳にしては大人っぽいエミリーと親友のロビンが、マサオ!と声を掛けてきた。・・・その後、サンタバーバラの崖から転落して瀕死の重傷を負ったエミリーだったが、四回の大手術を乗り越え、年明けには自宅でリハビリ療養するまでに回復した。五ヶ月後に再訪したミシェル家の玄関先で目に飛び込んできたのは、頭髪を短く刈り込んで幼い男の子のように見えるエミリーの姿だった。なんとか支えなしで歩き、自力で立っていられるまでに回復していたことに驚いたが、母のミシェルが奇跡的な回復と何度も語っていたのが頷けた。ミシェルはエミリーが撮影したというスイス人のおばあちゃんの白黒のポートレートを見せてくれた。エミリーは高校で写真のコースをとっていると聞いていた。おばあちゃんが去年の六月にアメリカに遊びに来た時に庭で板塀を背景に椅子に座っているところを撮った写真だった。なんとも言えない深くて優しい笑みを浮かべたおばあちゃんが光と翳のとても柔らかいコントラストの中に溶け込んでゆくような素敵な写真だった。いい写真でしょう?とミシェル。とてもいいよ、と僕。エミリーは才能があるのよ、母譲りのね、と一言多いミシェルだった。