ターミナル

そこは鉄道の終点だった。やけに懐かしい場所だった。折り返しの列車の窓には見覚えのあるクラスメートたちの顔があった。男は列車の入り口を探してプラットフォームを駆けた。どこにも入り口はなかった。ベンチに腰掛けて読書していた黒縁眼鏡の若い女が顔を上げて「あっち」とあらぬ方を指差した。男には何も見えなかった。

波打ち際

男は温泉宿に閉じ込められていた。出口を探していた男の前には次々と趣向を凝らした浴場が現れた。一体幾つの浴場があるのか不明だった。いつの間にか、温泉宿は特急列車に変わっていた。男は車両から車両へと空席を求めて移動したが、どの車両も満席だった。なぜか北へ向かっていた列車は、濃い霧の中で大きな露天風呂が背後に控える駅に到着した。男は胸まで浸かる深い露天風呂の中をもがくように歩いているうちに、気づいたら、砂浜の波打ち際を歩いていた。前方から小犬を連れたショートヘアーの女が近づいてきて、すれ違い様に「気をつけなさい」と男に言った。呆気にとられた男は波打ち際を歩き続けた。