2008-08-01から1ヶ月間の記事一覧

覚悟

早いもので、今日で8月も終わる。8月は体調を崩した風太郎との付き合いが濃密な一ヶ月だった。計四回病院に担ぎ込んだ。嘔吐と下痢をくり返し、餌もまったく口にしなくなり、立ち上がるのもやっとで、まともに歩けない日もあった。それでも、病院に入ると…

いっそのこと眼を瞑って歩いて写真を撮りたい

歩くこと自体を楽しむようになると、まるで足が眼になったような、あるいは足で世界を見ているような感覚が芽生えてくるから不思議である。足の眼が脳に合図を送ると、脳が手に指令を送り、カメラのシャッターを切る。そんな一連の無意識の動きが少しずつ身…

記憶と引用

歌の祭り作者: ジャン・マリ・ギュスターヴ・ルクレジオ,Jean Marie Gustave Le Cl´ezio,管啓次郎出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2005/03/15メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (18件) を見るメキシコの夢 旅は、心へと向かうものでなけ…

よく分からないのがイイ

左:『文學界』2006年1月号表紙:内藤礼「返礼」2005(アサヒビール大山崎山荘美術館) 右:『文學界』2007年9月号表紙:内藤礼「母型」2007 id:mmpoloさんが内藤礼の作品は「よく分からない」と書いている。 「内藤礼の作品がよく分からない」(『mmpoloの…

露草の記憶

「未亡人の涙、ノラニンジン」 露草の古名「つきくさ」は、花弁に触れると青色が「付きやすい」ことに由来するらしいが、野原で遊んでいて知らず知らずのうちに手や衣服に青い染みが付いていた子供の頃の記憶が微かに蘇っていた。雑草の生い茂る家裏にも露草…

クルミ、ツユクサ、シラハギ

札幌、曇りのち晴れ。無風。涼しい。真駒内競技場上空あたりをヘリコプターが旋回していた。バリバリバリバリ、空気を裂く音に微かな恐怖を感じるようになった。玄関を出た直後、ボタ、ボタ、ボタと音を立てて何かが上から地面に落ちてきた。何だ? と思って…

花咲か爺の新たな課題

今朝の散歩でサフラン公園が視界に入った時、いつもとどこか違う雰囲気を感じた。公園の方から聴こえてくる声の響きがいつもと違った。人間の耳はすごいものだ。毎朝慣れ親しんだサウンドスケープにほんの僅かでも変化があれば、それを敏感に察知して何らか…

ヌルデ、ノウゼンカズラ

今朝の散歩記録で、今はもう存在しないヌルデ(白膠木, Rhus javanica)*1のことを書いてから、町内に一本だけ残るヌルデのことが気にかかって、買い物ついでに見に行った。健在だった。小さな果実を沢山つけていた。ヌルデはウルシの仲間なので、茨城で漆掻…

町の記憶、町の記録

札幌、曇り時々雨。微風。涼しい。風太郎少し回復、散歩に行くと言う。霧雨の中散歩に出る。数日前から空き家の廃庭から通りに伸びたヤマブドウ(山葡萄, Crimson glory vine, Vitis coignetiae)の蔓には大きな葉の陰から熟しはじめた果実が見え隠れしてい…

闇でものを見分ける力

『グアテマラ伝説集』95頁 だいぶ涼しくなった今も私は時々夏の夜の枕頭の書の一冊、アストゥリアス『グアテマラ伝説集』と一緒に寝ている。最近は第六の伝説「春嵐の妖術師」を数節(下)読んでいるうちに、あるいは支笏湖と恵庭岳を連想させる「アティトゥ…

夏休み 子ども科学電話相談

NHKラジオ第1放送の番組「夏休み 子ども科学電話相談」(http://www.nhk.or.jp/vitamin/kodomoq/)がけっこう好きで聴いている。電話で質問する子供たちと回答する専門家の大人たち、それに間の手を入れるアナウンサーとの間のやりとりがある意味でスリリン…

不謹慎な映画に恩寵を見る

昨日、偶然にブラジルはリオデジャネイロのスラム街を舞台にした映画*1を途中から観た。幼い頃から麻薬に溺れ、銃を玩び、ちょっとした感情の動きが簡単に殺人につながり、報復の殺人が連鎖することが日常であるような世界が、そこを生き抜いて将来報道写真…

ブラジルの遠い谺

サンパウロ在住の写真家・楮佐古晶章(かじさこあきのり)さんの「今日のブラジル 写真日記(Photograph diary)」(『南米漂流』)を読んでいて、「遠い谺」を聞くような錯覚を抱いた。 「8・25 洒落たお店の増加」 「8・25 撮りたい写真」 「8・2…

島と本をつなげて

昔、札幌で会ったことがある映像作家の金子遊さん(id:johnfante)が、チェーホフの「音」、ソクーロフの「島」について書いているのを読んで懐かしくなった。 「2008-08-29 可愛い女」(『シネマの舞台裏』) ル・クレジオの『歌の祭り』を持って豊平川の河…

我が家にはもうない物

アスパラガス(Asparagus, Asparagus officinalis) 札幌、雨のち曇り。無風。やや蒸し暑い。風太郎不調。散歩は早めに切り上げる。散歩中、明け方見たらしい夢の断片が浮かぶ。詩人から映画人になった吉増剛造さんが現れる。雪の大地が予測できない方向に大き…

この秋の目標

スーダラ節じゃないが、分かっちゃいるけど、止められない、のが爺の悪いクセ。いい歳をして身の程をわきまえられない。このままじゃいけない、とは自分でもうすうす感じてはいたが、だらだらと惰性に流されてきた。そこで、この秋に向けての二つの目標を決…

Y婆ちゃんとの出会い

昨日の朝の散歩で、頭文字Yが目立つキャップを被ったお婆さんに出会った。そのYの字があまりに印象的だったので、「Y婆ちゃん」と呼ぶことにした。可愛いお婆ちゃん。藻岩中学校裏門横の低い塀にちょこんと腰掛けていた。散歩の途中の一休みだった。この…

クイーンの笑顔とサフラン・クラブ

今朝もまたサフラン公園で奇妙な腰振り体操(それは今流行りの骨盤体操だと最近知った)に没頭するクイーンとはち合わせた(→ 「花咲か爺、女王様に出会う」)。ある日私が笑顔で挨拶してからは、向こうから弾けるような笑顔で挨拶してくれるようになった。…

飛ぶ蝶が撮れない

札幌、曇り。風太郎不調。散歩を早めに切り上げる。ひらひらひらひらと優雅に飛ぶ蝶を撮りたいなと思って、目で追うが、カメラの目が追いつかない。14匹のモンシロチョウに出会ったが、一枚も撮れなかった。id:heiminさんが飛び立った直後の鳩の後ろ姿を激写…

ひかりと希望

じゃこしか爺さんが、「飛躍」を断った上で、劣悪な環境にもめげずに光を求めて逞しく生長する植物の健気な姿と、身勝手で不甲斐ない人間のひ弱さを重ねながら、大きな何かを静かに訴えていた。 「ひかり求めて」(『昭和ひとケタ樺太生まれ』2008-08-27) …

板塀と「ベルリンの壁」

散歩していると、こんな古い板塀に巡り会えたりするから嬉しい。昭和30年代のまだ可愛かった(「赤毛のマーちゃん」と呼ばれていた)子供の頃のいろんなシーンが思い出される。母が幼い私をつれてよく帰った実家はこんな板塀に囲まれていた。こんな八百屋さ…

辺境

「朝の水路」(1987年8月7日 インドネシア・ブドン島・バウバウ)辺境を歩く私は、いつもにこやかで楽しい。私は東南アジアが好きだし、海が好きだし、魚が好きだし、歩くのが苦にならない。その自分の気に入った方法で辺境についての常識を肥やしていきたい…

アメリカフヨウ、コスモス

アメリカフヨウ(亜米利加芙蓉, Common rose mallow, Hibiscus moscheutos)札幌、雨。無風。藻岩山見えず。風太郎不調。散歩には行くと言うので、傘をさして出かけるも、早めに切り上げる。 asin:B00008KKTQ昨夜はキース・ジャレットを聴いていた。『死と花…

怒れる爺、現る!

人間の一時的な都合で、「もう必要ないから」と捨てられそうな物が放っておけない。「痛ましい」。誰かに拾ってもらおうと必死に訴えているように見える。一昨日買った中古のVHSビデオもそうだった。『ベルリン・天使の詩』と『桜桃の味』。普通の意味では買…

すべては結ばれている

1885年、先住民の土地を買い上げようというアメリカ政府の申し出に対する回答としてルンミ族のシアトル酋長が諸部族連合会で演説を行った。ル・クレジオはそれを「人類に遺された最も美しいメッセージ」であり、「世界のすべての学校で教えられるにふさわし…

私の住む町略式変則案内その1あるいは爺の20年後の生活について

20年後を想像するための参考写真。その頃には笑顔のみならず、魅力的なウィンクまで身につけている(ハズ)。 20年後には頭でっかちの生活にはおさらばして、文字通り地に足のついた芸術のような生活を送るべく、もう少し南の土地かもう少し北の土地で、宇宙…

花咲か爺、ダールベルグデージーに負ける

止せばいいのに、先日田中光花園で衝動買いした、咲き誇るダールベルグデージー(Thymophylla tenuiloba)に麦わら帽子+笑顔で対抗しようとしたが、笑顔はあえなくしぼんで爺は沈んだ。だらしない(顔)。麦わら帽子に関しては、家族は頭ごなしに否定する路…

札幌の空

札幌、曇り。風強し。昨日20年前の映画『ベルリン・天使の詩』の中古ビデオを買った記録をつける際に、パッケージの写真はあえて原題のみが印刷された部分を載せた。すると、さすがにベルリン通の中山さん(id:taknakayama)は原題の「ベルリンの空(ベルリ…

灯台下暗し

わが隣人サド (1969年) (晶文選書) マゾッホとサド (晶文社クラシックス)作者: ジルドゥルーズ,蓮實重彦出版社/メーカー: 晶文社発売日: 1998/10/25メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 54回この商品を含むブログ (32件) を見る なんて灯台下暗しなんだ! …

20年前の映画、10年前の映画

娘に誘われてTSUTAYAに行く。娘が音楽を漁っている間、私は映画を新作から旧作までジャンルを問わず一通り見て回る。二、三、目に留まるが借りる気は起こらない。レジ横に中古のVHSビデオ百円均一の棚があるのに気づく。期待せずに、近づく。ああ、懐かしい…