瓦礫に


この天使はじっと見詰めている何かから、いままさに遠ざかろうとしているかに見える。その眼は大きく見開かれ、口はあき、そしえ翼は拡げられている。歴史の天使はこのような姿をしているに違いない。彼は顔を過去の方に向けている。私たちの眼には出来事の連鎖が立ち現れてくるところに、彼はただひとつの破局(カタストローフ)だけを見るのだ。その破局はひっきりなしに瓦礫のうえに瓦礫を積み重ねて、それを彼の足元に投げつけている。きっと彼は、なろうことならそこにとどまり、死者たちを目覚めさせ、破壊されたものを寄せ集め繋ぎ合わせたいのだろう。ところが楽園から嵐が吹きつけていて、それが彼の翼にはらまれ、あまりの激しさに天使はもはや翼を閉じることができない。この嵐が彼を、背を向けている未来の方へ引き留めがたく押し流してゆき、その間にも彼の眼前では、瓦礫の山が積み上がって天にも届かんばかりである。私たちが進歩と呼んでいるもの、それがこの嵐なのだ。

 『ベンヤミン・コレクション1近代の意味』(ちくま学芸文庫)653頁




アパート群解体進行中。瓦礫の山がだいぶ運び出された後だった。もうそこにはないことを知っているクリスマスオーナメントを目は探していた。「破壊されたものを寄せ集め繋ぎ合わせたい」



原生林のオオウバユリ(大姥百合, Giant lily, Cardiocrinum cordatum var.glehnii.




大内さんちのヒルガオ(昼顔, False bindweed, Calystegia japonica



帆足さんちのキク(菊, Garden mum or Chrysanthemum, Chrysanthemum morifolium


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