豊平川の岸辺で
上流にある豊平峡ダムの放流によって川の水嵩はかなり増していた。緑白色に濁った急流に、心臓の血の流れも急になった頃、岸辺を離れて橋を渡った。橋の中央に立ち、川を見つめた。
それが急流に集まり、
さらに大川へ向って奔流しだすと、もはや何物も
その水勢を押しとどめることはできなかった。
私の冷えきった体を渓谷の出口で見つけた
荒れ狂うアルキアーノは、それを
アルノ河へ押し流し、死に瀕した時に
私が胸の上で十字に組んだ腕を解きはずした
流れは岸に沿い底をかすめて私を翻弄し、
ついにその餌食(の砂礫)で私をおおいくるんだ
ダンテ、平川祐弘訳「神曲煉獄篇第五歌」から asin:4309463142
これは「橋の歓びの言葉」であると、四半世紀前にある詩人が語ったことを思い出した。