ブーメラン


いつも、藻岩上の橋、藻岩橋のあたりに差しかかると、かつてこの辺りにあったと伝えられる渡船場や、昔の人が豊平川を船で下る様子をぼんやりとイメージする。川を下るような気分で、左岸(下流、河口に向かって左側)に沿った道を歩く。ミュンヘン大橋、南22条橋を過ぎる。南19条橋に差しかかったあたりで左脚の付け根に違和感を覚える。大事をとって、引き返すことに決める。左岸を離れ国道に出る。国道に沿って歩く。違和感は痛みに変わり、痛みはだんだんひどくなる。小さなリサイクルショップで一休みする。店内をゆっくりと見て回る。木製のブーメランが目にとまって、びっくりした。偶然とは思えなかった。ある知人とアボリジニのソングラインについて話したばかりだったからだ。左脚の付け根の痛みを忘れた。オーストラリア土産だったものらしい。両端には川のような道のような極単純な曲線が、中央には飛ぶ鳥に見えるやや複雑な絵が、黒地に白、赤、黄の三色で描かれている。それが本物のアボリジニのシンボルなのかどうかは分からなかったが、迷わず買った。値段は300円。長さが50cmくらいあって、リュックには入り切らなかった。口からブーメランの端っこが飛び出したリュックを背負って歩いた。ブーメランのお陰か、左脚の付け根の痛みは幾分和らいだ気がした。魅力的な食堂と居酒屋には立ち寄らず、帰宅した。まるで自分がブーメランになったかのように感じて可笑しかった。近いうちに、豊平川の河川敷でこのブーメランを飛ばしてみようと思う。