巴旦杏の下で


スモモ(酢桃/李, Japanese plum, Prunus salicina


物置の壁に影を落とす満開のスモモを眺めていた。近くで庭仕事をしていた年配のご婦人が、私のカメラに目をとめて、主人もカメラマンだったのよ、と話しかけてきた。「ぼくは趣味で撮っているだけです」「いい趣味ね」 ご主人は仕事柄、道内をほぼ隈なく巡って撮影していたという。カメラを見るとご主人のことを思い出すらしい。「これはスモモですね」「ええ、でも昔は、たしかハタンキョウと呼んでいたわ」「ハタンキョウですか」「そう、ハタンキョウ」 牧野富太郎によれば、ハタンキョウ(巴旦杏)はスモモの一変種であるトガリスモモ(尖李)の別名である(『牧野日本植物圖鑑』435頁)。ところで、ハタンキョウ(巴旦杏)はスモモと近縁の(同じバラ科サクラ属の)アーモンド(Almond, Prunus dulcis)の別名でもある。アーモンドの和名はヘントウ(扁桃)。アーモンドの花と果実は写真でしか見たことがないが、スモモによく似ている。